放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「中村獅童さんのがん公表」をテーマに送る。

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 歌舞伎俳優の中村獅童さんががんであることを公表しました。中村獅童さんは1972年生まれで同学年。まさに団ジュニ世代。正直、年上の方や年下の芸能人の方が病気になったことを公表すると「かわいそう」とか「若いのにな」とどこか他人事。でも、同じ年の人だと違う。自分もその可能性があるんだよなと、急に自分事(じぶんごと)になってきます。

 同じ年の力ってスゴい。同学年の貴乃花さんが宮沢りえさんとの婚約を発表したときには度肝を抜かれました。同じ年の人が、しかも宮沢りえと婚約したと聞き、人生で初めて結婚というものが自分事に感じました。

 元プロ野球選手の木村拓也さんも同じ年。37歳でクモ膜下出血で亡くなられたとき。死ぬというある意味、究極の他人事が自分のテリトリーにあることに気づいた。同じ年数だけ生きてきた同学年の人が経験することは自分にもありえるのだと、教えてもらえた。

 病気なんてある日突然なるなんてことはわかっている。45歳って年ももう若くはない年齢だってわかっている。だけどそれはわかっているフリをしているだけで、「痛感」してない。痛みを感じて、初めてそれがわかることも多い。

 中村獅童さんの公表は、1972年生まれの団ジュニたちに痛感させてくれたはずだ。

 僕は30代後半から人間ドックを毎年受けている。先輩が検査を受けたときに腸にポリープがあって、そのポリープがあと半年たったらがんになる可能性があったと言われたらしい。タイミングが半年ズレていたら、がんと診断されていた可能性もある。それを聞いてから、ビビりの僕は人間ドックを1年に1回から8カ月に1回に早めた。40過ぎてからは大腸検査も毎回行っている。だが、僕は胃カメラが苦手で鼻からのカメラにしてもらっている。鼻からよりも口から入れるカメラのほうが精度が高いと言われたが、本当に苦手で鼻からにしている。

 
 今年、咳が止まらずに、病院に行き、レントゲンを撮影したら、先生が「あれ?肺に白い影があるな」と言った。超焦った。8カ月に1回人間ドックを受けていることを言ったら「じゃあ、大丈夫だと思うけど」と言った。「白い影があるって、それってどんな病気の可能性があるんですか?」と聞いたら「がんとか……」と言われた。「がんとか」の「とか」が妙にリアリティーがあったし、先生から「がん」という言葉が出たのは初めてだった。怖かったので、CTで検査を受けたら、結果大きな病気ではなかった。

 人間は不思議だ。結果が出て大丈夫だとわかると急に安心し、安心が油断に変わる。そんなときに、中村獅童さんのニュース。あのような公表はとても勇気のいることだと思う。同学年のあの公表で、自分にもその可能性があるのだと常にそれを意識し油断せずに自分事として考えなければならない。

 団ジュニ世代のみなさんも。ここから同学年がどんどんいろいろな病気にかかっていくことでしょう。もう若くはない。病気になるのが普通なんだと思って、検査をちゃんと受けましょう。僕も胃カメラ、口から入れます。

週刊朝日 2017年6月16日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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