大統領の支持率低下はそのまま政治的影響力の弱さになるため、共和党議員の「トランプ離れ」が加速する可能性はある。それでもトランプ氏は自らの言動を振り返り、反省するということはしないようだ。

 トランプ氏は17日、コネティカット州の沿岸警備隊士官学校の卒業式で演説し、「最近の私への扱いをみてください。特にメディアです。これほど悪く、不公平に扱われた政治家は歴史上いません」と、不満をぶちまけた。

 しかし、身内の共和党議員からも同情の声はほとんど聞かれない。17日付の「ザ・ヒル」紙によると、アマシュ下院議員は、「もしコミー氏のメモの内容が本当なら、大統領の弾劾につながりかねない」と話し、さらに「コミー氏とトランプ氏のどちらをより信頼できますか?」と問われると、「今の状況をみる限り、コミー氏です」と答えている。

 コミー氏は5月30日以降に上院情報特別委員会で証言する予定だが、そこで新たな重大証言が出れば共和党内でも弾劾ムードが一気に高まる可能性はある。

 前出のリヒトマン教授は昨年の米大統領選でトランプ候補の当選を予測して注目されたが、現在はトランプ大統領の弾劾を予測し、4月半ばに弾劾の論拠を示した著書『The Case for Impeachment』を出版した。

 同教授は「現在の共和党が両院多数を握る状況でも弾劾の可能性はある」とし、理由をこう説明する。

「国民に人気のないトランプ大統領のもとでの中間選挙は、共和党議員にとって不安要素です。従って彼らは大統領のマイナス要因のほうが大きいと判断すれば大統領と距離を置くだけでなく、弾劾訴追案に賛成することもあり得ます。民主党の下院議員が全員賛成した場合、共和党から25人賛成すれば法案は可決されます」

 米国の憲法には、「反逆罪、収賄罪、その他重大な罪、または軽罪」をおかした大統領を弾劾できる規定がある。下院議員の過半数の賛成で弾劾訴追され、上院で開かれる弾劾裁判で3分の2以上の賛成があれば、大統領は罷免される。

 ビジネスマンとしてはどんなに嘘をついても不正行為をしても、破産宣告や法廷和解などで責任を逃れてきたトランプ氏だが、大統領になったからにはそれは許されない。憲法が定めた、不正行為をした大統領に対して究極の責任を取らせる方法が弾劾なのである。

 もし議会で弾劾手続きが始まったら、トランプ大統領はどうするだろうか。ニクソン大統領のように弾劾裁判にかけられる前に辞任するのか、それとも最後まで闘うのか。

 一つ言えるのは、トランプ氏は自分を「ファイター」と呼び、そのように見せているが、実際は状況が厳しくなると逃げ出してしまうパターンが多いということだ。それは彼がビジネスの世界で破産宣告や法廷和解を何度も繰り返してきたことに表れている。

週刊朝日  2017年6月9日号