アブラの分類と、種類の具体例
アブラの分類と、種類の具体例

 健康志向のなか、気になるアブラ。できるだけ減らしたいと思う人は多いが、加工食品に含まれる「隠れアブラ」について専門家らが警告している。

 気を付けるべきアブラの質や種類について、かつてはバターやラードなど動物性脂肪はコレステロールを上げて心臓病などを引き起こすとして問題視されていた。今は「サラダ油」として健康によいイメージがあったオメガ6系(ごま油、大豆油、綿実油、グレープシードオイルなど)と呼ばれるアブラの過剰摂取の弊害に目が向いている。『カラダが変わる!油のルール』(朝日新聞出版)の著者で、油脂と健康の関係に詳しい麻布大学生命・環境科学部食品生命科学科教授の守口徹さんはこう語る。

「オメガ6系のリノール酸は、小児の成長には欠かせませんが、とりすぎるとさまざまな健康問題を引き起こすことがわかってきました。実は、加工食品で用いられている“植物油脂”“植物油”のほとんどは、リノール酸と考えてよいでしょう」

 オメガ6系が健康に及ぼす問題について、非政府組織(NGO)日本食品油脂安全性協議会理事長で、名古屋市立大学名誉教授の奥山治美さんが説明する。

「オメガ6系は、穀類などさまざまな食べものにも含まれている脂質で、現代人はとりすぎる傾向があります。フィンランドやオーストラリア、アメリカなどで実施された大規模な疫学研究では、オメガ6系を増やすと、心臓病やがんの発症率や死亡率が高くなるという結果が出ています」

 例えば、フィンランドの「ヘルシンキビジネスマン研究」は、男性ビジネスマン1200人をオメガ6系の摂取を増やした介入群と何もしない対照群に分けて、15年にわたって調査した。すると、介入群のほうが心臓病の死亡率が高いことが明らかになったという。

 ほかにもオメガ6系は、動脈硬化や高血圧、アレルギー疾患、ドライアイなどにも影響を及ぼしているとされる。守口さんは言う。

「オメガ6系は体内でアラキドン酸という脂肪酸に変わります。アラキドン酸はエイコサノイドという生理活性物質を作り、アレルギー症状や頭痛などを引き起こすと考えられています」

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