──両親が公務員でハングリーではないと公言していますが、どこにモチベーションを持っているのですか。
アドラーの兄弟分析が面白いんです。僕は三男なんですが、初めから2人がいて、自分が親の愛を一身に受けられないことがわかっていた。アドラーは協調性と表現しますが、三男故に親の愛を受けたい、自分のものにしたいという意識が根底にある。その辺りが、形を変えて、ファイティングスピリットになっているのかと思います。ボクシングする人間なんて、特別でありたいと願う奴ばかりです。その思いがボクサーとしての矜持につながっているのではないかと思います。
──今度の世界戦は暫定的なもので、ミドル級の真の王者はゴロフキン(カザフスタンのミドル級3団体統一チャンピオン)という外野の揶揄も聞こえますが。
ゴロフキンの存在は嫌でも意識しますね。やっぱり、これだけいろんな人にサポートしてもらって、大きな興行になった恩恵を返すのは、今度の試合に勝って、いずれ彼と戦うしかないと思う。普通にランキング何位かの選手と防衛戦を何度やっても、尊敬する山中慎介先輩(WBCバンタム級王者)が12回も防衛してますし。それは自分の生きる道ではない。世界的なビッグネームと大きなファイトをするのが自分の使命だと感じてます。
──リング上で燃え尽きたいという気概はありますか。
ボクシングはいつゴールになってもおかしくない。負けてしまえば終わり、引退ですよ。初めて試合を生で観戦した辰吉丈一郎さん(元WBCバンタム級王者)がリング上で失神してKO負けする姿を見て、「この人はリングで死ぬんだろう。ボクサーとして理想だ」と思いました。ゴールはいつかみんなに来るわけですけど、エンダム戦は勝てばゴールまでの過程になる。負けてしまえばエンディングになりかねない。
──ずばり勝算は。
僕はガードを固めて、最大の武器である右のストレートでプレッシャーをかけ殴りにいくだけです。エンダムは経験豊富で足が止まらないタフさがある。僕の力を完全に捌き切られれば、相手のほうが強い。ただ、興行的に背負うものは当然あります。負けられないという気持ちはものすごく強い。だからこそ、自分自身をコントロールしないといけないんです。ベストを尽くして、必ず勝ち、強さを証明したい。(聞き手 本誌・村上新太郎)
※週刊朝日 2017年5月26日号