「4、5年前からキャストの質が低下していると感じる。人手不足からなのかもしれないが、以前はあったプロ意識が薄らいでいる。例えば、笑顔とかゲストへの声かけとかが、自然に行うというよりはやらされている印象を受けた。コアなファン向けのイベントや商品が増えていて、ビジネス優先といった感じも受ける」

 この女性は昨年6月にオープンした上海ディズニーランドに行ったところ、予想以上に楽しめたという。

「日本での報道で悪い印象があったが、行ってみるとパーク内はきれいだしキャストのサービスも良い。アトラクションも最新機器で行列時間も短い。上海は日本から近いし、いまなら東京よりオススメできる」

 上海ディズニーは3月末時点で約850万人の入園者があった。1周年にあたる6月には1千万人を超える見通しだ。

 オリエンタルランドも手をこまねいているわけではない。5月12日にはディズニーシーで、海中を進むような体験ができる新しいアトラクション「ニモ&フレンズ・シーライダー」がオープンした。

 ディズニーランドでは20年春までに総額約750億円を投じて、「美女と野獣」「ベイマックス」などをテーマにした新エリアを開く。

 人材面でも、キャストの教育を強化していくことでサービスの質を上げていく。オリエンタルランドの労働組合は4月から、アルバイトら非正規従業員約1万9千人を組合員にした。待遇の改善や、育児・介護への配慮などを経営側に求めていく方針だ。

 オリエンタルランドの横田常務執行役員はこう意気込む。

「ハードの強化と人材育成などのソフトの強化の2本柱で取り組み、20年度に集客数で過去最高のレベルを目指す。全体では上海と比べて負けていると思っていない。過去に香港ディズニーランドができたときも、香港からの客が増えた。東京の良さと上海の良さは違うので、お互い盛り上げていけたらいいと思う」

 TDRについて詳しい桜美林大学の山口有次教授は、次のように分析する。

「オリエンタルランドはようやく大規模なアトラクションの新設や施設改修の内容が固まり、人材の育成などにも乗り出し始めた。もともと持っているポテンシャルは、USJや上海ディズニーとは比べ物にならない。今はジャンプするためにかがんでいる状態。大規模リニューアルが完成してキャパシティーが増えれば、入場者数は自ずと増える」

 果たして夢の国は再び輝きを取り戻すことができるのか。

※週刊朝日2017年5月26日号※週刊朝日  2017年5月26日号