日本郵政の長門正貢社長(左)と西室泰三前社長 (c)朝日新聞社
日本郵政の長門正貢社長(左)と西室泰三前社長 (c)朝日新聞社
海外企業の買収で損失があった主な事例
海外企業の買収で損失があった主な事例

 よく調べないまま焦って買い物をすると、「ほんとはもっと安く買えたはず」と後で後悔することがある。企業の買収だと後悔どころでは済まず、数千億円もの巨額損失につながる。東芝や日本郵政など日本を代表する企業が、海外企業の買収で相次いで失敗した。

【図版】海外企業の買収で損失があった主な事例

 5月12日、日本郵政による不動産大手「野村不動産ホールディングス」の買収検討が報じられた。郵便事業は人口減少や電子メールの普及で伸び悩み、企業買収で不動産事業を新しい収益の柱にしたい考えだ。

 ただ、日本郵政は買収の失敗が表面化したばかり。2015年、傘下の日本郵便を通じて豪州の物流大手「トール」を6200億円で買った。豪州の景気低迷もあって業績が想定より悪く、17年3月期に約4千億円の損失を計上した。

 日本郵政は17年3月期決算が400億円の純損失になる見通し。赤字は07年の郵政民営化以来初めて。長門正貢社長は「買収価格がちょっと高すぎた。見通しが甘かった」と認めた。同社株式の8割は政府が持ち、国民の財産が損なわれたことになる。長門社長ら役員が報酬の5~30%を6カ月間返上する。

 旧郵政省出身の稲村公望・元日本郵便副会長は「トールは資源などの物流会社で、日本郵政とは事業内容がまったく異なる。統合によるプラス効果は期待できなかった。海外事情に詳しい幹部がほとんどいないのに、無理して急いで買った。新たな買収は失敗を検証してからにすべきだ」という。

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