外来で症状を伝え、BUTを調べたところ、典型的なBUT短縮型のドライアイだとわかった。

「BUT検査は、眼科医ならば簡単におこなえます。新しい診断基準が浸透すれば、診断がつかずにドクターショッピングに陥る患者さんは少なくなると期待しています。BUT検査は点眼薬を適切に使い分けるためにも重要な検査です」(横井医師)

 BUT検査で涙が崩れていく現象を「ブレイクアップ」というが、そのパターンを調べることでドライアイのタイプがわかる。

 タイプの一つが、涙の量が少ない「涙液減少型」。全く涙が出ない重症例と、正常より少なめの軽・中等症例がある。

「重症の人は水分の確保が必須となるため、涙点プラグ治療が必要です。軽・中等症の人にはジクアホソルナトリウム(商品名:ジクアス)か、レバミピド(同:ムコスタ)という点眼薬を使うことで、涙が安定し、まばたきの摩擦が減って、症状が改善します」(同)

 これら二つの点眼薬は、いずれも涙を定着させる「膜型ムチン」を目に補充できるドライアイ治療薬だ。

 二つ目のタイプは、「BUT短縮型」。このタイプはさらに、黒目の表面に水分がつく力が落ちる「水濡れ性低下型」と水分はつくものの蒸発が早い「蒸発亢進型」に分かれる。前者なら膜型ムチンを補充する治療しか効果は得られない。後者は比較的どの薬も効きやすいため、従来あるヒアルロン酸点眼薬を使う場合が多い。

 野田さんは、水濡れ性低下型とわかったため、ジクアホソルナトリウムが処方された。

 いずれの点眼薬も多くは、効果が出るまで1カ月を要する。効果の実感がなくても医師の指示どおりに点眼を続けることが大切だ。

 野田さんは、1カ月後にBUTは改善し、夕方になると感じていたつらい疲れ目やもののぼやけもずいぶんと改善していた。現状の薬は点眼をやめると、元の状態に戻ってしまう。点眼を続けながら、作業中は意識的に休憩をはさむことで、精力的に仕事に取り組んでいる。

「現代の環境は誰もがドライアイになっても不思議ではありません。症状は我慢しても決して治りません。ドライアイの裏にうつ病やリウマチなどの病気が隠れていることもあるので、ぜひ眼科を受診してください。適切な治療を受ければ、多くの症状は軽減できます」と、横井医師は呼びかける。

週刊朝日  2017年5月19日号