休養日のガイドラインを出している教委はある。例えば、兵庫県では、公立の中学高校に「ノー部活デー」の取り組みを推奨し、「平日は週1日以上」「土日は月2回以上」は、部活動を行わないよう「お願い」をしている。

 だが、アンケートでは、ガイドラインでは手ぬるいという指摘もあった。高校の男性教員(50代)は「罰則のない目標では守らないのは当然。部活指導で家庭崩壊している教員は少なくない」と訴えた。

 また、部活の成績が良ければ進学に有利になることから、たっぷり練習させたい保護者もいる。そういう声はどうしても大きくなり、休みたい顧問や長時間部活に疑問を持つ他の親は、ものが言えなくなる。

 そんな中、学校現場では改善に向けた教職員の自発的な動きも出ている。

 関西の私立中学で管理職経験のある男性教員は「2年前から、『日曜は公式戦以外は活動しない』というルールになった」と話す。

 この中学ではもともと毎週水曜と、土日のどちらかを2週間に一度、休養日にしていた。保護者は、学業重視派と部活漬け肯定派に分かれていた。

 そんな中、教職員会議で話し合いがもたれ、授業準備に専念できない実情と、「学校のアピールには授業を大事にするべきでは」という空気が出てきたことで、水曜と日曜が原則休養日となったという。

「企業での体験学習など、生徒や保護者のニーズも多様化している。これからは学業で生徒の未来を保証していく時代。練習試合の数の制限など、行政が実効性のある通達をすべきでは」と、この教員は話した。

 愛知県教委は今年度から、公立の中学高校での部活動の休養日の基準を決めた。中学校は平日を含めた週2日、高校は週1日(土日のいずれか)の休みを「必須」とし、事実上義務化したのだ。

 神奈川県の公立中で球技の部活動顧問を務める20代の男性教員は、昨年の夏季休暇中まったく休みが取れず、体調を崩して倒れた。

「毎日練習している部が、なぜか学校の中でヒエラルキーが高い。結局、社会問題になっている長時間労働の温床は、中学の部活動にある。この時期に、長くやるのはいいことだと刷り込まれているんです」

 部活漬けと働きすぎは根っこがつながっている。

〈注〉週刊朝日アンケート:4月10日から1週間、朝日新聞出版のウェブサイト「dot.」を通して実施。「部活動のつらい体験」などを尋ね、生徒、保護者、教員らから計47通の回答を得た。

週刊朝日 2017年5月19日号