作家・室井佑月氏は、森友学園問題と消費増税の関連について指摘する。

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 4月20日の「YOMIURI ONLINE」に「麻生氏『上げやすい景気状況に』消費増税に意欲」という記事が載っていた。

〈麻生副総理兼財務相は19日、ニューヨーク市内で講演し、2019年10月に予定される消費税率の10%への引き上げについて、「上げやすい景気状況になりつつあることは確かだ」と語った〉んだって。

 ほんとか? ここ4年、エンゲル係数はじわじわと不気味な感じで上がりつづけて、そのことが問題になっているんだけど。

 つまり、所得が伸び悩む中、食料品が値上がりして、食べていくのが精一杯といった人が増えているってことじゃないの。

 あたしは4月の頭に読んだ、ライザップの……じゃなくて、獨協大学経済学部教授の森永卓郎さんが、「週刊実話」の連載「経済“千夜一夜”物語」で書かれたコラムを思い出しちゃった。

 読み返してみる。「森友学園問題のもたらすもの」というタイトルだ。

〈今回の事件の主役は、誰がどう考えても財務省近畿財務局だ〉と森永さんは書いている。不当に安くなった森友学園の土地取得に際し、財務省が全面協力している事実がある、と。しかし、財務省は資料などをすべて廃棄したなどといって、真相の解明を阻んでいる。

〈一方の安倍総理は、国有地払い下げに自分や妻が関与していたら、総理はおろか、国会議員も辞職すると宣言している。この状況は、「財務省が安倍総理の生殺与奪の権利を握っている」ということを意味する。小役人の1人でも、安倍総理の名前を出せば、総理が辞任に追い込まれるからだ〉

 その財務省は、冒頭の麻生氏発言のように消費税増税を最優先課題に掲げる。森永さんは最後にこう結ぶ。

〈森友学園問題は、財務省にとって追い風となる。しかも、安倍総理の窮地は、総理再登板を狙う麻生財務大臣にとっても好都合だ。やはり、森友学園問題の主犯は、財務省ではないのか〉

 
 高齢の麻生さんが自分の再登板を狙うか、傀儡(かいらい)みたいな者にやらせようと画策するかは置いといて、森永さん、さすが! コラムに書かれたことが、当たってるじゃん。

 だとすると、相当、腹が立たないか? 消費税を上げるかどうかという大事な話に、国民は不在だ。無視といってもいい。

 だいたい、まず真っ先に消費税に手をつけようとするのは、役所側がとりやすいという理由だけではないのか?

 パナマ文書の問題はどうなった? この国の金持ちたちは、脱税スレスレの方法で、税金逃れをしているとわかった。法で規制し、まずそちらの金をぶんどっていただきたい。

 それに森友や加計学園問題でわかったが、支持者やお友達には、国の財産をタダ同然にくれてやり、夫人には夫人付職員という名の秘書を5人もつける無駄遣い。

 みなさん、ワイドショーで流れなくなったからといって、忘れちゃ駄目よ。

週刊朝日 2017年5月19日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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