「オーバーナイト透析も会社員の方がよく利用されます。この透析は時間をかけるので尿毒素がよく抜ける分、有用な成分まで抜けてしまうことがあります。そのため透析後に数値のチェックをすることが重要です」(同)

 ほかにも、ダイアライザーを自宅に設置して、在宅で血液透析をする人も増えている。この場合、注射針のさし方など、患者自身が3~6カ月ほどクリニックでトレーニングを受ける必要がある。万一のための介助者(血縁・同居者)も必要だが、医師ら医療スタッフは不要だ。機器の運搬・設置の費用がかかるほか、電気代や水道代で毎月2万円ほどが別途かかる。

 陣内医師はこう話す。

「在宅血液透析の患者さんのなかには、週に6回透析し、富士山に登ったり、マラソンに挑戦したりしている人もいます。血液透析の選択肢はさまざまあるので、自分に合ったものを選び、人生を楽しんでほしい」

 人工透析には、自宅や職場でできる腹膜透析もある。

 胃や腸がある腹腔内(各臓器の間)に男性で2リットル、女性で1.5リットル程度の透析液を入れ、約4~6時間そのままにしておく。すると腹膜を通して、血液中の尿毒素や余分な水分が透析液のほうに出てくる。これを取り出し、新しい透析液と交換する作業を1日約4回繰り返すのが、CAPD(連続携行式腹膜透析)だ。

 日本大学板橋病院腎臓・高血圧・内分泌内科部長の阿部雅紀医師は、メリットについてこう説明する。

「透析液を腹腔に入れた後は、買い物をしたり映画を見たりなど、普通の生活ができます。腹膜透析は長時間かけてゆっくりおこなうので、4時間の血液透析に比べて、からだへの負担が少ない。腎臓の残存機能も低下しにくい。また、血液透析は血圧が低下しやすいので、血圧が低い高齢の患者さんにも腹膜透析を勧めています」

 腹膜透析ははじめに、カテーテルを腹腔内に挿入する手術を受ける必要がある。また、カテーテルと透析液の袋をつないだり、切り離したりする作業には約30分ずつかかる。とはいえ、作業としてはそれだけだ。

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