若いときのように眠りたいという気持ちはわかるが、人が必要とする睡眠時間は、年齢を重ねるほど短くなる。個人差もあるが、シニア世代の睡眠時間の平均は、5~6時間ぐらいだ。

「この世代で最も控えたい行為は、睡眠時間を確保しようと早めに布団に入ることです」(櫻井さん)

“布団に入っても眠れない”という日課が繰り返されると、強い不安となって記憶の奥底に刷り込まれる。その結果、寝室自体が不安を覚える場所となり、余計に眠れなくなってしまう。

「理想は、布団に入ると条件反射的に眠気が襲ってきて、眠りにつくという状態。でも、それは寝つきの悪さに悩むシニア世代にとっては難しい。ですので、眠くなるまでは寝室や布団に入らないようにすることをお勧めします」(同)

 夕食後、寝るまでの間は睡眠のことを忘れる。それが眠りをよくするコツなのだ。

【2】シニア世代の散歩は朝はNG、夕方以降に
 一般的には目覚めてから16時間後に眠る態勢が整う。つまり、朝4時に起きれば、夜8時には眠れるようになるわけだ。だが、シニア世代の場合、睡眠時間が短くなるため、8時に寝たら夜中の1時、2時前には起きてしまう。

 こうした「眠る時間が早まる」傾向に対しては、あえて生活リズムをうしろにずらすという方法がある。ここで活用するのが「光」の作用だ。朝の太陽光は、24時間ぴったりではない体内時計をリセットする役目を持つ。これは網膜にある神経節細胞が朝の強い光をキャッチすることで、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌リズムを調整してくれるためだ。

 ただし、日光はいつ浴びてもいいわけではない。国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)部長の三島和夫さんは言う。

「朝7時に目を覚ますケースで考えてみます。午前中から午後の3時ぐらいまでの日光は早寝・早起きになるよう体内リズムを早める。晴れているときは、30分ぐらいの日光浴で前日にずれた分は取り戻せます。一方、3時以降の太陽光や照明は体内リズムを遅らせます」

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