西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、昨年の下位チームが上位となるための条件とともに、ペナントレースがおもしろくなる野球の見方を解説する。

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 監督なら誰もが、外国人選手が順調に開幕を滑り出してほしいと願う。チームの中核を担うからだ。野手ならクリーンアップを任せるわけだし、先発投手ならば、最低10勝。クローザーなら30セーブ以上を期待する。

 4月に入って、楽天は2番を打つペゲーロが本塁打を重ねている。オリックスもロメロが故障で抜ける試合があったとはいえ、安定した打撃を披露している。前年の下位チームが上を目指すには、外国人の規格外の活躍が一つの条件ともなる。なぜなら、前年から大きく戦力の上積みができるからだ。

 ただ、外国人選手は、不振に陥っても、どこかでコツをつかむと一気に上昇するものであって、簡単に切り捨てるわけにもいかない。日本ハムで今や欠かせない存在となっているレアードも、来日1年目のオールスター明けに一気に開花した。だから、指揮官がどこまで我慢できるかも注目すべき点である。

 だが、その我慢も、チームが上位にいることが前提になる。下位に沈んでいるチームは、我慢している場合ではなく、上昇のためにテコ入れをすべきだろう。新外国人選手の獲得もその一つだ。5月には下位球団は新外国人を加入させ、起爆剤とすることも求められるだろう。オフの時期に加入して開幕から先発メンバーに名を連ねる現有の外国人選手は、4~5月で結果を残す必要がある。

 楽天でいえば、ペゲーロだけが好調で、アマダー、ウィーラーが絶不調だ。しかし、梨田監督は上位にいるかぎりは我慢ができるだろう。一方、下位に沈むロッテはダフィー、パラデスをいつまでも待つわけにはいかない。どこかで手を打たなければならない。ゴールデンウィーク明けには、各球団の動きが活発化してくる。その補強状況で勢力図もまた変わってくるよ。

 
 外国人選手とともに、チームの底上げを図るには、新戦力の台頭も不可欠になる。投手は毎年のように生きのいい選手が出てくるし、今年も4月から各球団で白星を重ねているのを目にする。野手でも西武・源田や中日・京田は開幕からスタメンで使われている。新たな風をチームに吹き込み続けてほしいよな。

 日本人の主力に目を移すと、打つべき選手、勝たなきゃいけない選手に故障や不振が多い。WBCで侍ジャパンの4番を張った筒香のボールのとらえ方が少し気になるな。しっかりとボールを見極める点は変わっていないが、狙った球を打ちにいくときに少し体が突っ込んでいる。もともと実力のある選手だけに、心配は無用だと思うが、このコラムの執筆時点では、0本塁打。WBCの活躍を見たら信じられないよ。筒香と同じく中軸を務めた中田も4月13日に故障で出場選手登録を抹消された。2人が打たないと、チームも計算は立ってこないから、監督も悩ましいよな。

 春先は勝ったり、負けたりしながら、チームをどう軌道に乗せていくか。そして、チームのどこが穴で、いかにして埋めていくかを考えるもの。夏以降に戦力を最大化するために、試行錯誤を重ねる時期でもある。各球団の監督が打順変更などを含めて不振の選手にどんな手を打ち、そしてフロントはどういった補強策に打って出るのか。各チームの日々の変化を追っていくことも、これからの時期はおもしろくなる。

週刊朝日  2017年5月5-12日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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