マスターズで優勝を果たしたセルヒオ・ガルシア選手と驚愕の復活を見せた松山英樹選手に丸山茂樹氏が拍手をおくる。

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 もう、朝から感動させられましたよ。今シーズンの海外メジャー初戦「マスターズ」(4月6~9日、米ジョージア州オーガスタのオーガスタ・ナショナルGC)は、37歳のセルヒオ・ガルシア(スペイン)が74度目のメジャーで初優勝を果たしました!

 ジャスティン・ローズ(英国)と通算9アンダーで並んでプレーオフへ。1ホール目の18番はローズがボギー。ガルシアは3.5メートルのバーディーパットを決めると、左右の拳を握りしめて、雄たけびをあげました。出場19回目でのマスターズ初優勝は最も遅い記録だそうです。セベ・バレステロス、ホセ・マリア・オラサバルに次ぐ3人目のスペイン出身のマスターズ王者。しかも最終日の4月9日は、スペインの英雄であるセベが生きてれば60歳の誕生日ですから。ドラマチックですよねえ。

 僕がガルシアと会ったのはテレビマッチが最初だったかな? 彼が1999年にマスターズでベストアマになってプロに転向して、その年の11月に千葉のカメリアヒルズというゴルフ場でテレビマッチをやったんです。9ホールのマッチプレーと4種類のスペシャルステージ対決で盛り上がってね。

 お互いに米PGAツアーを回るようになると、アメリカではお互いに「外国人」ですから、いろいろ話をして。僕らに対してはアメリカ人のギャラリーのヤジがキツいこともあるんですよ。イライラしてるときに、傷口に塩を塗る感じでね。それでガルシアがギャラリーに悪態をついて問題になったりしましたけど、ほんとに世話好きで優しい子でね。僕がスペインに行ったときは、おいしいレストランを教えてくれましたね。最高の人間だと思ってますので、ほんとマスターズで勝ってくれてよかったですよ。もう18年も世界の第一線で頑張ってる訳ですから、彼こそスーパー・レジェンドだと思います。

 松山英樹(25)は76、70、74、67で回って結局11位でした。3日目の最終18番で4パットしてしまって、優勝は遠くなった。もし僕なら、あの4パットで心が折れちゃいますよ。でも英樹は違うんですよね。その瞬間は相当に落ち込んだでしょうけど、その悔しさを最終日にプラスの力に変えて、その日のベストスコアで回るんだから並大抵の選手じゃないです。何くそ、という感じでね。気持ちいいですよね、見てて。ずっと懸念材料だったショットも復調しました。

 ただ、本人も言ってるように、パットですよね。4日間で4パットが1ホール、3パットが6ホールもありました。ガルシアは3パットが1ホールだけ。それだけで7打差ですからね。大きな差がついちゃいました。「絶対に勝てる自信がある」ってコメントしてるのは、パットが少しはまったら勝てると思ってるんでしょう。ショットに関する苦手意識はまったくない訳だから。問題はグリーン上だけだってことを確信した大会でしたね。

 最後に、フィギュアスケートの浅田真央ちゃん(26)が引退を表明しました。心も体も酷使してきたんでしょうね。これからはアイスショーでみんなを楽しませてくれたらな、と思います。真央ちゃん自身も、それが楽しいでしょうし。お疲れさまでした。

週刊朝日  2017年4月28日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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