西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、開幕して間もないペナントレースから注目するチームとその戦力、今後の課題を解説する。

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 プロ野球が開幕して2週間が過ぎた。まだ、全チームが対戦したわけではないし、6カ月間のペナントレースは長いから、どの球団が……と論じるのは早いかもしれない。それでもセ・リーグは広島の力が一つ抜けていると感じる。

 昨季独走で優勝を果たした広島だが、打線の鋭さはさらに研ぎ澄まされている。特に昨年から感じているのが打線の順応性だ。相手の先発投手に対して、1巡目では封じ込まれても2巡目、3巡目に入ると、タイミングを合わせてくる。これは投手にとってはすごい重圧だ。先発投手の鉄則は相手より先に先制点を与えないことだから、おのずと初回から飛ばしていくケースが増える。だが、それでは中盤以降に球威が落ちる。広島はそこを捉えるケースが増える。対戦相手からしたら、早めに継投をしていくしかない。

 広島は開幕投手のジョンソンが咽頭(いんとう)炎で離脱し、守護神の中崎も脇腹を痛めて出場選手登録を抹消された。しかし、若い投手陣がみんなでカバーしている。それも強力打線があってこそ。チームが強くなるときはそういうものだ。強力打線のチームは、投手が育ちやすい。なぜなら「2~3点やっても大丈夫」という中で投げられるからだ。逆に投手王国の場合、打線は効率的に得点を挙げる能力を学んでいく。小技を交えた隙のない野球を展開できる。広島は若い投手陣が自信をつけ、一本立ちできる土壌が整っている。4月7日のヤクルト戦のプロ初登板初先発でノーヒットノーランまであと2人までいったドラフト1位の加藤、昨年のドラ1岡田らが、どんな成長曲線を描くか楽しみだよ。

 王者が順調にスタートを切ったセ・リーグと違い、パ・リーグは昨季日本一の日本ハムが苦しいスタートとなった。大黒柱の大谷に加え、4番の中田も負傷している。守護神のマーティンも出場選手登録を抹消された。これでは苦しい戦いとなるよな。一方で、昨季下位に沈んでいた楽天が非常にいい野球を展開していると感じている。

 
 楽天は2番に強打のペゲーロを入れた打線がはまっている。2番の強打者といえば、2015年にリーグ優勝したヤクルトが川端を入れて成功したが、近年のトレンドにもなっている。例えば、1、2番打者と4、5番打者では年間100打席近く変わってくる。1番でなく、2番に置くことで、チャンスメイクと打点の両方を担わせることができる。日本でも、初回からバントをする球団は減った。ならば、一番いい打者を2番に置くという考えも理にかなっている。

 一方でクリーンアップが弱くなる可能性も秘める。そこで何を考えるか。クリーンアップといえど、何も走者をかえすために振り回す必要はない。今の楽天の選手には粘る意識が浸透している。球数を投げさせ、相手先発を疲弊させる。チャンスに仕留めようと力むのではなく、次へつなぐ意識は、相手からすれば嫌らしい打線となっている。

 肝心なのは、連敗するときが来たとしても、1年間、この野球を貫くことだ。そのためには忍耐力も必要になる。負けが込むとどうしても変化を求めたくなる。ただ、全員が変化したら、それはチーム全体の戦い方までもゆがむ。変化は首脳陣が起用法の中でつければいい。そうすれば、楽天も面白い存在となる。

週刊朝日  2017年4月28日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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