短めソックスの流行は、ルーズソックスや茶髪、ギャルメイクといったドラスティックな変化とは違い、ゆるやかに広がったものだと稲垣所長は言う。

「ガウチョパンツや太眉の流行もそうですが、近年は、流行に敏感な人から徐々に広がって、長い時間をかけて大きく変化するという傾向があります。変化し続ける必要はありますが、変化が急激すぎるとついてきてもらえないのです」

 ソックスが急にクシュクシュしたのではなく、“じわじわ変化”に気づいていなかっただけのようだ。

 実際に渋谷の街に出てみると、ハイソックスのコもいるが、短めソックスはもちろん、そしてクシュクシュソックスのコも、けっこういる。

 学校指定のソックスをたるませているコに話を聞くと、

「学校では、ちゃんと上まで上げてはかないと怒られるんですけど、放課後になったら下に下げてます」(都内私立・高3)

「学校指定から短いのにはき替える」(都立・高2)

 というコも。なぜわざわざ下げたり、はき替えたりするのか。

「ハイソックスはダサい」(都内私立・高2)

 シンプルな答えだった。なかには、

「最初から短いのはいてます」(千葉県私立・高2)

 すでにハイソックスを知らないJKたちも存在するのだ。

「短め」「クシュクシュ」支持の理由は、「脚が細く見える」「脚がキレイに見える」。または、「みんなはいてるから」。

「ただ、紺のハイソックスが流行したときも、理由は『脚が細く見えるから』でした。ルーズソックスも、そのボリューム感で『細く見えるから』(笑)。見た目は違う流行なのに、理由が同じなのがおもしろいです」

 ベストセラー『東京女子高制服図鑑』シリーズなどの著者、森伸之さんはそう言う。

 90年代から2000年代にかけて、東京の女子高生には暗黙の「ドレスコード」が存在していたと森さんは分析する。

「特に90年代なかばに起こった、女子高生ブーム。『女子高生的な』スタイルに注目が集まり、より女子高生らしく見える、見られたい、そんな意識の高まりで、みんな同じ格好になっていきました。制服のときには必ずローファーを履く、リュックではなくスクールバッグで。ハイソックスが流行れば、みんなできっちりハイソックスをはく。校則ではなくて、自分たちのなかに、『女子高生はこういう着こなしをすべきだ』という強烈なドレスコードがありました」

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