作家・室井佑月氏は、シリア政府軍を攻撃したアメリカを安倍政権が支持すると表明したことについて、不安を覚えるという。

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 安倍首相は4月7日、米軍がシリアのアサド政権の空軍基地をミサイルで攻撃したことについて、さっそく支持を表明した。

「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意を、日本政府は支持する」

「国際秩序の維持と、同盟国と世界の平和と安全に対するトランプ大統領の強いコミットメントを日本は高く評価する」

 だってさ。アメリカ様は絶対です、っていったんだ。

 大丈夫か? 2003年、アメリカはイラクが大量破壊兵器を保有しているってんで、イラク戦争をはじめた。当時の首相の小泉さんも、真っ先にアメリカを支持した。だが、その後、大量破壊兵器は発見されなかった。

 今回、化学兵器を使ったのは、ほんとうにシリアのアサド政権なんだよね? そこ重要でしょ?

 だが、菅官房長官は7日の会見で、「事実関係の詳細は国連機関が調査中」といっていた。調査結果を待ってから動くんじゃダメなんかい?

 現在、共謀罪法案の審議が国会で行われている。政府の説明によれば、テロ対策ということだ。安倍首相は「この法案が成立しなければ、オリンピックは開けない」とまでいっている。

 だけど、単独犯までいるテロを防ぐことは無理だ。このことについて、金田法務大臣は国会でもまったく答えられていない。

 テロを防ぐには、テロに狙われないような対策を打つしかないのに、安倍首相は真逆に動いているとしか思えない。そんな疑問を口にしてしまう者が対象にされるんじゃないの、共謀罪って。

 4月7日付東京新聞朝刊の「こちら特報部」に、「日・イスラエル投資協定承認問題、倫理欠如で国際的批判も」という記事が載っていた。

 トランプさんがイスラエル贔屓(びいき)だから、安倍さんもってか?

 国際社会はイスラエルの入植活動の拡大を非難しているという。記事の中で、京都大の岡真理教授がこういって憤っていたぞ。

 
「イスラエルは、一貫して国際法や国連決議を踏みにじってきた。ガザ地区への空爆などは、国家テロと言っても過言ではない。そうした『無法国家』と日本がパートナーになることなど、倫理的にあり得ない」

「(前略)入植地ビジネスに関わらなければよいという問題ではない。イスラエルと関わる最も大きな代償は『日本は金もうけさえできれば、人権を侵害し続ける国とも手を取る国家だ』と見なされることだ」

 岡教授、この国はもうそういう国なのでは? 翌日、8日付東京新聞朝刊には、

<公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、人道的見地から国際条約や法律で禁止されているクラスター(集束)弾を製造する米国企業の株式を保有していることが七日、分かった>って記事が……。

 安倍さん率いるこの国に、誇りが持てない。

週刊朝日  2017年4月28日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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