現役続行を目指していたが、もういいよとみんなが内心思っていた。これ以上苦悶する姿をやはり見たくない。さすがに忍びない、という感情になっていた。もう十分な結果を、これまで見せてくれたわけですから。

<浅田真央が愛される理由>
杉本厚夫 関西大学人間健康学部教授

 愛される理由は三つあると考えています。第一に運に恵まれず五輪で優勝できなかった点。日本人は五輪に対する思い入れが強い。実力があるのに運に恵まれず、結果を残せなかった真央さんを支えたい。

 第二にひたすらにトリプルアクセルに挑戦するという点。年齢を重ね跳べなくなってもなお挑戦する姿に人々は感動します。スポーツの美学は挑戦するところにあります。挑戦のないスポーツには感動しません。

 第三に子供のころから知っているという点。社会的な不安がある中で、何があっても明るく前向きに、悲壮感なく次に向かって挑戦する真央さんの姿に人々は共感した。インタビューでも涙は見せない。そういう前を向いて生きる姿を見せてくれた。世代を超えて多くの人に力を与えたのです。真央さんは理想の娘そのものなのです。

※週刊朝日 2017年4月28日号より抜粋