これを避けるため、小島案では豊洲市場を約150億円かけて解体。土地を民間企業に売却してマンションや商業施設、小中学校の用地とする。その際に容積率を上げて高層ビルも建築可能にすることで、売却価格を約3200億円から約4370億円まで吊り上げられるとの案も示された。これまで移転に投じられた約5900億円のうち、かなりの部分が回収できることになる。まさに「ウルトラC」的な解決策だ。

 8日の説明会では集まった業者らから拍手が巻き起こったが、小島氏は「民間の会社組織ならば会社がこうすると言えば、こうなる。問題はそれが築地でできるかです」と釘を刺した。

 この“予言”どおり、さっそく、小島案に対しては豊洲移転賛成派から猛烈な反発が巻き起こっている。

 11日に開催された「新市場建設協議会」では、豊洲移転を望む水産卸や青果の業界団体幹部が「関係者に何の話もなく、いきなり私案を発表した」「小島氏がやったことは、業界を分断しただけだ」などと激しく反論。都民ファーストの音喜多氏も、小島案を紹介するネット上の記事に、

<容積率緩和という手法で豊洲の売却額を上げる試算をするならば、築地も同じ基準で売却額を比較する方がフェアですね>

 と、異論を唱えるコメントを投稿した。

 小島氏と音喜多氏の市場移転をめぐる路線対立は本誌が以前報じたとおり。確執はまだ続いているようだ。

 本誌は小島氏に取材を申し込んだが、「個別の取材には応じていません」とのこと。ただ、小島氏が2月4日に「希望の塾」で講義したときのプレゼン資料を見ると、そのまま移転賛成派への反論となる考え方が書かれていた。

 小島氏は資料の中で「シカタガナイ症候群に陥らない」と強調。次のように主張していた。

<思考停止のメカニズム
 既成事実の積み重ね──『(考えても)シカタガナイ』 ※豊洲市場は約6000億円もかけて作ってしまったのだから、移転するしかない。考えてもシカタガナイ>

 今回の築地改修案も、こうした考え方を元につくられたのだろう。小島氏を知る関係者はこう語る。

「築地改修案は市場経営の持続性も有する現実的な案。消費者の安心を満たすことが困難で経営の持続性も欠く豊洲移転案と共に両案を示すことで、小島氏は小池知事の合理的政治判断に結びつけたいと考えている」

 ブレーンや側近の意見が真っ二つに分かれる中、小池氏は14日の会見で小島案への感想を求められても、

「豊洲市場案、築地市場案ということで、比較を行っていく上で、どちらも当然、参考にすべき」

 と、“中立”の姿勢を保った。この難問に、どんな答えを出すのだろうか。(本誌・小泉耕平/横田 一)

週刊朝日 2017年4月28日号