もっとも、私立中学に対しては別の意見もある。

中学受験が子どもをダメにする』などの著書がある教育研究所ARCS代表の管野淳一氏は「私立に行かせるのがよい教育というイメージは間違い」と話す。私立中高一貫校が難関大受験に有利との説明も幻想という。一部の優秀な生徒が複数の大学に合格すれば、合格実績も膨らむためだ。

「多くの学校は進学者数でなく合格者数を発表し、実態が見えにくい。超名門の私立中高一貫校でも、難関大合格者は上位3分の1ほど。名門中の生徒でも真ん中より下の成績なら、公立上位校から大学に進学するのと大きく変わらないのです」

 コストパフォーマンスの面からみると、近年増えた公立中高一貫校も人気だ。

「学費が安いうえ、難関私立中ほど特殊な入試問題が出ない。小5秋か小6からの準備でも間に合い、塾の費用も安く済む。私立中への進学が経済的に難しい家庭の優秀な子も、多数挑戦します」(森上氏)

 長女が私立中に通うファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんは中学受験を意識し始めた親に対し、進学準備の費用に上限を設けることを助言する。通塾しているのに焦りで家庭教師をつけたり、講習会などを片っ端から受けたりするのは避けたほうがよい。塾以外の習い事や家族旅行をやめる、親同士のつきあいに過度なお金をかけない、任意の寄付や学校債で無理をしない……などいろいろとやりくりできる。

 鈴木さんはこう話す。

「中学受験にこんなにお金をかけて、もとが取れるのでしょうか?という質問をよく受けます。しかし、そもそも子育てでもとを取ろうとするのは無理。何のための受験で、なぜその学校に行きたいのか、そのために何をあきらめるか。こうした点を親子で共有し、結論を出したいものです」

週刊朝日  2017年4月21日号より抜粋