だが、4日の百条委で自民党都議から資料に残るXデーという言葉について問われた赤星氏は、「そのような言葉を使った覚えはございません」と否定。それなら、なぜ東ガス側にこのような資料が残っていたのか。真相は謎のままだ。
一方、もう一つの重要な資料が01年7月18日に都と東ガスとの間で結ばれた「確認書」だ。この中で、両者は豊洲予定地の汚染処理について〈(汚染の)拡散防止を目的として処理を行う現処理計画により対策を実施〉と定めていた。この約束こそが、後の混乱の“原点”だと指摘するのは、前出の水谷氏だ。
「都は汚染の拡散を防止すれば除去しなくていいという約束を東ガスと結んでいたわけですが、都議会や土地の購入価格を決める財産価格審議会には『汚染は東ガスが除去することになっている』と説明し続け、その前提で土地の価格を決めていた。二枚舌だったことが証明されたのです」
だが、不可思議なことにこの「確認書」には公印が押されておらず、文書を作成した権限のある責任者も不明のままだ。
文書に署名があった野村寛・元都政策報道室担当部長は百条委で「記憶にない」などと曖昧な証言に終始。「上司に報告したと思うが誰か覚えていない」と、誰の指示だったかも語らなかった。
水谷氏はこう語る。
「あれだけ重要な文書について、少なくとも直前まで交渉を主導していた浜渦元副知事と赤星元理事が知らなかったと証言しているのは不可解です。野村氏は文書に名前が残る損な役回りを押し付けられたように見える。誰かをかばって真相を黙っているのでは」
浜渦氏は01年7月6日以降、交渉にかかわっておらず報告も受けていなかったと証言したが、4日の百条委では前川燿男・元知事本局長(現練馬区長)が「石原さんはほとんど登庁しなかった。浜渦さんが分身として権限を握っていた」などと、真っ向から対立する証言をぶつけた。
03年5月に浜渦氏に部下がうかがいを立てた文書も資料として提出されており、委員の間では浜渦氏の偽証の認定をすべきとの声が上がっている。
前出の音喜多氏はこう話す。
「浜渦さんは偽証の可能性が濃厚です。浜渦都政のもとで東ガスとの『確認書』であるとか、水面下の裏取引がまとまっていったと見ています」
果たして誰がウソをついていたのか。真相が明らかになる日はくるのだろうか。(本誌・上田耕司)
※週刊朝日 2017年4月21日号