西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、ソフトバンクに移籍して以来、成績が振るわない松坂大輔投手に期待を寄せる。

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 ソフトバンクの松坂大輔投手が3月25日の広島戦(ヤフオクドーム)で7回を無安打無失点の快投を見せたが、開幕ローテーション入りは逃した。

 1戦前の登板となった3月18日の西武戦(メットライフドーム)で快投していたら……と考える人も多いだろう。だけど、どれだけ過去に実績があろうと、ソフトバンクに移籍した過去2年で公式戦はわずか1試合の登板。監督というものはチームを回す上で、実績と現在の実力を加味しながら決めるが、昨年のローテーションを守り抜いた投手をまずは優先させる。層の厚いチームで開幕ローテーションに入るのは高い壁だった。

 しかし、明らかに過去2年とは違う光が差している。西武戦で右足内転筋に張りを訴えて降板したことを報道で知って、大輔に電話をした。「いい下半身の使い方をしている証拠。これまで使えてなかった部分が使えているから」と話したよ。下半身をしっかり沈め、球持ちも良くなってきた。体に粘りが出てきていると本人も感じているだろう。

 2009年の第2回WBCで股関節に痛みを抱えたまま投げ抜いた後遺症というべきか、それ以降は股関節の動かし方が長く本人の課題の一つとなっていた。肩や肘の故障も重なって崩れた投球フォームを元に戻すことはできなくなり、相当な時間を要したが、ようやく良化の兆しが見える。過去2年は、とても1軍で戦える状態ではなかったが、これならば、シーズン中に工藤監督は必ず登板機会を与えるはずだ。

 大輔はチャンスを待ち続けなければならない。今後はドラフト1位の田中正義など将来有望な若手も、2軍での登板を続ける中で、プロとして戦う術を身につけてくる。2軍でも競争になるし、安定して結果を残すことが重要になる。摂津だって黙っていないだろう。チャンスは1試合か2試合かもしれないが、そのときまでしっかり準備を重ねることだ。

 
 それにしてもソフトバンクの選手層は厚い。打線だってロッテから加入したデスパイネは、ヤフオクドームでさらに長打力を期待できる。昨年は李大浩が抜け、柳田の故障もあって、内川にかかる負担は大きかった。今年は柳田が状態を上げているし、デスパイネがいることで、内川、松田らもマークが分散するだろう。

 シーズンの順位を予想すると、ソフトバンクが覇権を奪回するとみる。2位はロッテ。オープン戦首位と好調だし、投手陣も駒は揃っている。昨年日本一となった日本ハムは投打の柱である大谷翔平が万全の状態ではない。投手として、先発できるメドがいつ立つか。序盤苦しむようだと、ソフトバンク、ロッテと差を開けられる可能性もある。

 上位3強に古巣の西武もぜひ食らいついていってほしいよね。打線では浅村がキーポイントだろう。先発では昨季後半から安定した投球をみせる多和田が年間ローテーションを守って最低10勝以上はしてほしい。でないと楽天FA移籍した岸の穴は埋まらない。打線は破壊力があるのだから、投手陣がどれだけ踏ん張れるか。そのためには開幕から勝率5割以上をキープして、上位に離されないようにしないといけない。

 セは正直予想すらできないが、DeNAの戦いに注目している。

週刊朝日 2017年4月14日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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