このような考えのもと、畠山さんに合った訓練方法を見つけ、誤嚥しないような食べ方を伝授した。

「声帯を閉じることができるようになってきたら、今度は喉に食べ物を入れて、のみ込むときに声帯を閉じたまま、つまり息をこらえたままのみ込むようにしてください。かなり誤嚥せずにのめるようになります」

 戸原氏にそう教えられ、畠山さんは必死に訓練に励んだ。さらに口の中や身体のリハビリ、口腔ケアも丹念に行った末、2年後には胃ろうを外すことができ、食べられるようになった。回復は一気に加速し、その2年後には仕事に復帰できた。

「本当に夢のようです。諦めなかった娘のおかげで、幸運にも戸原先生に出会えた。戸原先生と会っていなければ、今でも私は病院でベッドに横たわり、ただ天井を見ているだけの生活が続いていたと思います」(畠山さん)

週刊朝日 2017年4月7日号より抜粋