年齢を重ねると、筋力や視力などが低下し、からだが虚弱化しやすくなる。そんなとき、東洋医学は何をしてくれるのか (※写真はイメージ)
年齢を重ねると、筋力や視力などが低下し、からだが虚弱化しやすくなる。そんなとき、東洋医学は何をしてくれるのか (※写真はイメージ)

 認知症や難聴など、加齢にともなうさまざまな症状も、適切な漢方薬を使うことで改善できる。ポイントは、「血」と「気」。漢方では加齢をどのように診るのだろうか。週刊朝日MOOK「心とからだを整える 本格漢方2017」よりお届けする。

 年齢を重ねると、筋力や視力などが低下し、からだが虚弱化しやすくなる。日本老年医学会は、高齢者のそうした状態を「フレイル」と呼ぶと、2014年に提唱した。

 フレイルとは、要支援・要介護の危険が高い状態のこと。筋力、運動能力、認知機能、持久力など、社会的な側面を含んだ広範な意味で使われており、同学会はフレイルの予防を訴えている。

 また、加齢によって筋肉量が減少し、身体機能が低下する「サルコペニア」という病態もある。これは身体的な部分にだけ着目していることが特徴だ。

 これらの症状について、日本医科大学病院東洋医学科部長で微生物学・免疫学教室主任教授の高橋秀実医師に、東洋医学の観点から解説してもらった。

「どちらも、体内に循環する血液やエネルギーの不足が原因で起こります。これを『血虚』『気虚』といい、これがさまざまな病態を引き起こしているのです。血虚は気虚を生み、気虚は血虚を生みます。

 お鍋の水が十分に入っていれば、火にかけたときに大きな対流が発生しますよね。からだをお鍋に例えると、十分な水と温めるエネルギーがあるかどうかが大事なことなのです。まずは病態を見抜いて、適切な漢方薬で血を補い(補血)、エネルギーを補う(補気)ことが大切です」

 血虚は、筋肉内の血液循環が悪くなって血が不足している状態で、気虚は対流エネルギーが不足している状態だ。

 血虚の症状は、筋肉のけいれん、皮膚のかゆみ、顔色の不良、爪のもろさ、手足のしびれ、不眠、動悸(どうき)、健忘などに表れる。

 その原因としては、慢性的な失血、肺機能の低下、心機能の低下などがある。この場合、血を供給する熟地黄(じゅくじおう)が入った四物湯などの補血剤で治療する。

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