インターバル速歩が、なぜ、生活習慣病やうつ、がん予防効果をもたらすのか。「速歩は筋肉を作ることに役立つ。筋肉をつけることがさまざまな病気予防のカギになるんです」と能勢さんは言う。

 効果を理解する上で重要になるのは、細胞内に存在するミトコンドリアで、08年に有名な科学雑誌ネイチャーに載っていた理論に基づく。

「ミトコンドリアは車のエンジンのようなもの。車がガソリンを燃やして走るように、ミトコンドリアはブドウ糖や脂肪酸を燃やして生命エネルギーを作り出しています。車も新しいうちは完全燃焼しますが、古くなると不完全燃焼を起こして排ガスを出すようになる。ミトコンドリアも同じで、古くなると機能が低下して活性酸素を排出するようになります」(能勢さん)

 この活性酸素によるダメージが脳の神経細胞に及ぶと認知症や高齢者うつになり、脂肪細胞に及ぶとインスリンの効きが悪くなり糖尿病になり、血液中にいるマクロファージなどの免疫細胞に及ぶと動脈硬化が起こって心臓病や脳卒中に、がんを抑制する遺伝子に及ぶとがんが作られる……というしくみだ。

「この理論でいうと、現在、生活習慣病治療で使われている降圧薬や血糖降下薬も、すべて症状に対する対症療法でしかなく、根本的な治療とはいえません。大事なのは、これらの病気に共通するミトコンドリアの機能低下を抑えることだと考えられます」(同)

 ミトコンドリアの機能を上げるには「筋肉をつけること」が大事で、簡単でお金をかけずにできる方法が速歩というわけだ。

 インターバル速歩のやり方を改めて説明すると、基本は<ゆっくり歩きと、速歩を交互に3分ずつ5回、計30分間続ける>というもの。スピードは「ややキツイ~キツイ」ぐらいが目安。正しい歩行姿勢で、できるだけ大股で歩くのがポイントで、速歩初心者や、体力的に30分間続けることが難しい人は無理せず、数回に分けて行ってもよい。詳しいやり方はNPO法人熟年体育大学リサーチセンターのホームページを参照してほしい。

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