津田大介「見直し迫られるウェブ広告の構造」

ウェブの見方 紙の味方

津田大介

2017/03/30 16:00

 企業が望まぬウェブサイトに出稿してしまう問題は、昨年末からくすぶっていた。その中心はヘイトスピーチ、女性蔑視、白人至上主義的な記事を配信し、“オルタナ右翼のプラットフォーム”を自認する「ブライトバート・ニュース」。フェイクニュースの発信源としても知られる同メディアに企業が広告を表示していいものか、現在でも大きな議論になっている。

 議論の引き金を引いたのはシリアルなどの食品製造で知られる米ケロッグ社だ。昨年11月、「当社の価値と相いれない」という理由でブライトバートをブラックリストに入れた。同様の動きは欧州にも飛び火。ドイツの広告会社ショルツ・アンド・フレンズのシニアストラテジスト、ジェラルド・ヘンセル氏は昨年12月、現在のウェブ広告の仕組みがフェイクニュースやヘイトスピーチを生み出す温床になっているとして、自身のブログで右派媒体への資金提供停止を訴える「ノー・マネー・フォー・ライト」キャンペーンを始動した。BMWやドイツテレコムなど、ドイツを代表する大手企業がこの呼び掛けに応えた。

 しかし、この件がきっかけでヘンセル氏はブライトバートを支持する右派ブロガーたちの攻撃対象となり、勤務先やクライアントまで巻き込む騒動に発展した。結果、ヘンセル氏は退職を余儀なくされた。

 この問題の本質は、扇情的なコンテンツでアクセスを集めるフェイクニュースやヘイトスピーチであっても広告を配信し、広告収入を供給してしまうウェブ広告の構造にある。広告業界が民主主義の危機に手を貸しているという意識を持たない限り、解決しない。一刻も早く問題の大きいサイトへの広告配信を停止するスキームを作るべきだ。

週刊朝日  2017年4月7日号

津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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