石原さんは「地方の生徒が早慶に入ると、学費に加えて生活費も多くかかる。少子化が進むなか、子どもが近くにいてほしいと考える保護者が増え、近年は早慶より地元の国公立大志望者が増えています」と話す。

 早大の増加数2位は、洗足学園(神奈川)。直近の14~17年の合格者数をみても、47人、65人、82人、108人と右肩上がりだ。校務主任の中東誠教諭は躍進の理由をカリキュラム変更だと分析する。

 10年前は、国立文系、国立理系、私立文系、私立理系のクラス編成だった。国公立志向の強まりとともに、国立・私立のクラス分けをやめた。今は国公立大が第1志望で早慶併願、または早慶どちらかが第1志望の生徒が多いという。

 中東教諭は「現在は文系と理系に分け、最後まで国公立をめざして5教科を学ぶカリキュラムです。高い志で学ぶため、進学実績が上がり、中学から成績優秀な生徒が受験するようになりました」と話す。

 昨年は早慶の合格者数がほぼ同じで、慶大進学者が多かった。今年は早大の合格者が108人で、慶大が59人。「国語が得意な学年は早稲田の合格者が多くなる傾向があります」(中東教諭)という。

 慶大の増加数2位は本郷(東京)。進路指導部長の山梨英克教諭はこう語る。

「興味あることを自主的に学べるよう、中学生の夏休みは夏期講習ではなく、『教養講座』を開いています。保護者の協力を得て、東日本大震災における医療支援や超大国インドでの仕事などをテーマにしています。6〜7年前からは、中3になると興味あるテーマの卒業論文を書くようにしました。自分で調べて学ぶ姿勢を中学で身につけるため、高校で学力が伸びるのだと思います」

 早慶の合格者数上位のなかで、今年は昨年より人数が減った学校も目立つ。駿台の石原さんは、私大が入学定員管理を厳格化している影響とみる。文部科学省は補助金交付の判断材料として、入学定員に対する入学者数の基準値を設けている。石原さんは「基準値を超えると交付されなくなるため、私大は合格者数を絞り込んでいます」と話す。

 狭き門の早慶の入試。そのなかで激戦を勝ち抜き、躍進する高校の取り組みに注目したい。

週刊朝日 2017年3月31日号