「大阪市北区で起こった母子餓死事件を知ったのがきっかけです。お寺の“ある”と社会の“ない”をつなげることで、貧困問題の解決に寄与できれば、と始めました」

 13年5月、大阪市北区のマンションの一室で母子の遺体が見つかり、「おなかいっぱい食べさせられなくて、ごめんね」というメモが残っていた。14年の厚生労働省の発表によれば、18歳未満の子どもの貧困率は16.3%で、6人に1人が貧困とされている。

「320万人もの子どもたちが貧困状態にあるということです。当たり前のようにちょうだいしているお供え物ですが、それを“もったいない”状態にすることなく、“ありがとう”に変えていきたいです」(松島住職)

 このほか、日本気象協会のホームページによると天気予報で物流を変えるプロジェクトがあり、食品ロスの削減につなげている。たとえば、売り上げが天気に左右されやすい豆腐。群馬県内のメーカーは、気象情報で需要を予測し、年間約3割のムダを省いた。さらには食品メーカーは冷やし中華つゆのムダを約2割減らした(対前年比)。

 自治体による取り組みも、全国に広がりつつある。代表的なのは長野県松本市が発案した「3010運動」だ。この運動は、酒をつぎ合うことで、つい席を立ってしまいがちな宴会で、「スタートの30分と会を締める前の10分は自分の席に戻り食事をする」という食べ残しをなくすための試み。神奈川県厚木市も運動を展開する自治体の一つだ。2月時点で22の飲食店や宿泊施設が参加している。

 そのうちの店舗の一つ、飯山温泉元湯旅館の女将の石川信子さんは、10年ほど前から、宿泊客の食べ残しが気になっていたという。宴会などで表立って食べ残しをしないでとは言えないが、試行錯誤を続けてみた。

「特に白米の食べ残しが目立っていたんです。もったいないなと思って、どうしたら食べ残しが減るのか考えました。そこで雑炊に変えてみたところ、食べ残しが減ったんです」

 宿泊客は高齢の方が多く、コースの懐石料理でも食べ残しがあり、石川さんはメニューも見直した。

「食事の量と値段を抑えたミニ懐石料理を新たにメニューに加えたんです。それまで『食べきれないよ』というお声が多かったのが、『このくらいで十分』との評価をいただくようになりました。食べ残しは目に見えて減りましたね」

週刊朝日 2017月3月31日号