家庭からの食品ロスの一例(東京都23区内、井出さん提供)
家庭からの食品ロスの一例(東京都23区内、井出さん提供)

 約632万トン。1年間に日本で捨てられる食べ物の量だ。この数字、実は1300万人の東京都民が1年間に口にする食品量に相当する。それ、捨てますか? 「食品ロス」になっていませんか?

 農林水産省によると、世界全体の食料援助量は年間約320万トン。日本で捨てられる食品の量はその2倍に当たることになる。

 なぜ無駄が生まれるのか。『賞味期限のウソ』の著書がある食品ロス問題専門家の井出留美さんは、食品に関わるメーカーや小売店、消費者の三者それぞれに原因があると断言する。

「食品業界に“3分の1ルール”という不思議な商慣習があるのが、まず一つの原因です」

“3分の1ルール”とは、賞味期限の3分の1までを小売店への納品期限、次の3分の1までを消費者への販売期限とする業界の商慣習だ。たとえば、賞味期間が6カ月の食品ならば、製造してから2カ月以内に小売店に納品しなければならず、次の2カ月のうちに消費者に売らなければならない。その期限を過ぎると、返品や廃棄処分となる。

「このルールは90年代に大手スーパーが始めて、他が追随したそうです。メーカー、小売り、消費者で賞味期限を分け合うという言い分なんですが、たとえば輸入菓子だと作ってから運ぶまでに時間がかかりますよね。飛行機で運べば速いですが、コストが上がるし、かといって船だと時間がかかる。ついには納品期限が過ぎて売れなくなってしまうんです」

 井出さんによれば、納品期限に注目すると、日本が特に短く設定されているという。米国では賞味期限の2分の1、ヨーロッパでは3分の2に設定されていることが多く、イギリスでは4分の3。納品期限が長ければ、それだけメーカーに余裕が生まれる。農水省と食品業界がチームを立ち上げ、ルール緩和に向けて動いているが、そのルールが生まれた背景には消費者の購買行動がある、と井出さんは指摘する。

「食品ロスの632万トンのうち、330万トンが事業者によるものなんですが、その一部は消費者が作っているとも言えます。飲食店での食べ残しだったり、スーパーで商品棚の奥から賞味期限が1日でも先の食品を取るといった行動だったり。消費者が変わらないとだめなのではと考えています」

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