現在は月に2件ほどのペースで請け負い、1件あたり10万円前後で、月に合計約40万円稼いだこともあった。もうけは貯金に回し、結婚資金の足しにした。

 仕事の経験や知識を生かしたコンサルタントの道もある。大手建設会社の幹部で50代の男性は、昨年夏、専門知識を持つ個人に話を聞けるサービス「ビザスク」(東京)に登録した。ビザスクによるとアドバイザーは約3万人いて、7割が現役の会社員だという。

 男性は資材調達の経験を生かし、これまでに3回、スポットコンサルタントをした。平日の夜に企業のオフィスや喫茶店で1時間ほど質疑応答する。

 質問内容は資材の買い手が重視するポイントを聞かれることが多い。例えば住宅設備の場合、価格や省エネ性能、納期などいろいろな要素があり、優先順位を考える。どのような設備が求められているのか、長年の経験をもとに助言する。

「相手もプロなので厳しい質問をぶつけられる。それに答えることが、これまでの経験や知識の棚卸しになる。頭の中で曖昧(あいまい)になっていたことが客観的に整理できる」

 手数料を引かれても1回あたり2万~3万円の収入があった。家族からも外食や買い物の費用にまわせると期待されている。

 注意点は業務上の秘密を漏らさないようにすること。自身の仕事に関することは、質問されても答えなくて構わない。

 日本では、こうしたスポットコンサルは発展途中だが、海外では広がっている。男性はビザスクとは別に、米国の企業からネットを通じて依頼があり、助言したこともある。

「会ったこともない人とネットで仕事の情報をやりとりすることは、日本ではまだ抵抗感がある。だが、経験豊富な50~60代の会社員の意識が変わってくれば、スポットコンサルは拡大していくはずだ」

週刊朝日 2017月3月31日号より抜粋