「同僚から『よくやるね』と言われるが、将来本格的に店を開こうと思っているのでいい経験になります。営業時間を午前10時から午後4時までと短くして、月曜日の仕事に影響が出ないようにしています」

 カレーやデザートも自分で調理するが、食材のロスもあり、もうけは1日で数千円しかないこともしばしば。だが、利益は重視していないといい、

「地域の住民を含め幅広い人とつながれる。お客さんから情報を得られるので、本業の広報の仕事にもプラスになる」(稲増さん)

 副業を認める企業は増えているが、実際に踏み出す人はまだ少数派だ。稲増さんは言う。

「まわりに遠慮して始めない人もいるが、好きなことからやってみたらいい。会社以外に自分の居場所を見つけられるのは、心の余裕にもつながります」

 副業を始める際に便利なのがネットを通じて仕事を紹介するサービスだ。大手IT企業で働く岡直哉さん(27)は、大手のランサーズに2015年夏に登録した。ランサーズによると、累計で約20万社が仕事を発注している。

 会社で培ったウェブデザイナーの技術を生かす仕事をしている。アパレル系企業や飲食店の運営会社などから、ホームページの制作を発注された。レストランの来店者を増やしたいといった要望に沿って、効果的なデザインを考える。

「仕事内容が似ているので、副業での経験を本業にフィードバックすることができる。いろんな依頼を受け、社内だけで働くより大きな経験値を得られる」

 匿名登録をやめると、信頼感を得たのか、依頼が増えた。

「多くの企業が発注しているので、自分に合った仕事を探しやすい。個人が企業と契約すると支払いなどでトラブルになる可能性があり、仲介会社を通したほうが楽だった」(岡さん)

 副業を続けるにはスケジュール管理が肝だ。本業で忙しい平日は避け、土曜日にまとめてこなし、日曜日は休む。

「デザインを考えるのが好きなので、土曜日に働いても苦にはならない。自分の能力が社外で通じるのか確認できる喜びもある」

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