「チェックリストで不安を感じたら、まずは専門医の診断を。診断時には、何をもってどう感じたか、という点が重要。それも自分一人のみならず、本人が普段接している中で、なるべく立場の違う人の意見を聞けると、より客観的な内容になります。久々に会った人の意見も聞けると、より参考になりやすいでしょう」

 もちろん、周囲の意見のみならず、本人がどう感じているかを聞くことも大切だ。「最近どう?」とさりげなく様子をうかがってみたり、「あまりしゃべらなくなったけど、具合でも悪いの?」など、話しやすいように水を向けてみると良い。

「本人が自分の変化をどれぐらい自覚しているか確認することも大事。会話の中から、本人と周囲との感覚のずれがどれくらいあるのかを探ってみて」(柴山さん)

 ケアマネジャー歴16年の牧野雅美さん(東京都介護支援専門員研究協議会・副理事長)は、「放置しているうちに、症状は深刻化してしまう」と指摘する。

「認知症は、発見が早ければ早いほど、生活上の工夫や周囲が受け入れる準備をしやすく混乱を軽減できる。初期の段階では家族の“そうあってほしくない”という思いが現実と向き合うことを難しくする例も少なくありません。ようやく向き合ったときには、もっと早く行動すべきだったと悔やむことになりかねない。そうならないためにも、チェックリストを参考に、ちょっとした変化を見逃さず向き合ってもらいたい」

 神経内科を専門とする浅野次義さん(浅野生活習慣病予防研究所)は、認知症が最も発症しやすい年齢として、「65~70歳」を挙げる。

「だから60歳を超えたら、なるべく早く気付くためにもチェックが必要。特に飲酒量が多い人や、血圧が高い人、メタボ気味の人は要注意。初期こそ、本人にも自分の変化に対する驚きがあるものですが、進行してくると開き直り始めたり、忘れたことも忘れてしまったりする。だからこそ、早期発見が大事なのです」

 情緒面が絡む変化を測る上で難しいのが、認知症初期兆候としての「症状」なのか、もともとの性格によるものなのかという見極めだ。一般的に、加齢とともに理性が薄れ、本来の性格が出てくるという傾向もある。つまりこれまで理性で保たれていた部分が、加齢による機能低下とともに徐々に剥がれ、本質が見えてくるというわけだ。

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