「もの忘れ」など記憶力に影響が出るイメージが強い認知症だが、“初期症状”として表れる状態はさまざまだ (※写真はイメージ)
「もの忘れ」など記憶力に影響が出るイメージが強い認知症だが、“初期症状”として表れる状態はさまざまだ (※写真はイメージ)

 認知症の「初期兆候」を測る新指標が国際会議で発表された。従来の初期症状より一歩手前の、「初期の初期」を知るための一助になるという。ポイントは情緒面の変化。認知症は発見が早いほど、進行を遅らせられる。まずは「健康チェック」気分で気軽に、33項目と向き合ってみてほしい。

「もの忘れ」など記憶力に影響が出るイメージが強い認知症だが、“初期症状”として表れる状態はさまざまだ。初期だから診断が難しく、異変のグレーゾーンが広いこともあり、放置しているうちに症状が加速してしまう例も少なくない。

 そんなごく初期の兆候を測る新指標として昨年、国際アルツハイマー病会議で発表されたのが、「軽度行動障害(MBI)」という状態だ。これまで認知症に先立つ状態としては、「軽度認知機能障害(MCI)」が一般的に知られていたが、認知機能障害に先立って「心理社会的障害」が生じるという指摘もある。MBIのポイントもそこにある。つまり、「情緒面」の変化を測る項目が網羅されているという点が新しいのだ。

「記憶力を測るものはすでにあるが、情緒面を測る指標はこれまであまり見られなかった。初期に発生する精神的な変化を測る上での助けとなるでしょう」

 認知症専門医で、東京医科歯科大学医学部付属病院特任教授の朝田隆さんは言う。

「認知症は記憶面の衰えだけでなく、情緒面から入るケースもある。個々によって症状も進行具合もそれぞれで、必ずしもMBI→MCIと進んでいくものとは言い切れませんが、早い段階でチェックすることをおすすめします。本人だけでなく、家族や周囲の人も一緒に確認すると良いでしょう」

 下記の33項目のチェックリストは、諏訪東京理科大学教授(脳科学)の篠原菊紀さんが同発表をもとに、一般の人でもわかりやすく作成したものだ。「意欲や関心」「気分や不安」「衝動制御」「社会適合」「思考」の五つの観点から状態を測るもので、理不尽に怒る、我慢が利かなくなるなどの状態もチェック対象に当てはまる。

 チェックリストの項目は、情緒面が絡む分、本人の主観だけでは測りづらい。さらに認知症は、本人が症状を自覚していないケースも多いので、家族をはじめ周囲の客観的なチェックが重要になる。在宅看護学を専門とする柴山志穂美さん(埼玉県立大学保健医療福祉学部)は、チェックリストで当てはまる項目には、それを裏付ける具体的なエピソードをあわせて記述することをすすめる。

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