自衛隊の南スーダン撤退、認可や国有地の売却をめぐる森友学園の問題について、作家・室井佑月氏が論じる。

*  *  *
 
 3月10日、安倍首相は南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊を5月末で撤収すると発表した。

 よかった。この国の縁の下の力持ち、大事な自衛隊の方々が、謎の事故死なんてことになる前で。

 だって、彼らに対して不誠実だもん。稲田防衛大臣は「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきじゃない」などといい、だから戦闘という言葉じゃなく、武力衝突という言葉を使うと説明した。

 自衛隊の方々は国に命じられ命をかけて危ない場所にいっているのに、危ない場所だと認めたくない、っておかしいよ。

 政府は撤退する理由として、「一定の区切りをつけることができる」「治安の悪化によるものではない」などといっていたが、ほんとにそうなのだろうか。

「そういうことをやってみたかった」というぐらいの感覚で自衛隊を南スーダンに派遣し、森友学園問題で責められている今、自衛隊員が亡くなりでもしたら、「マジで俺、ヤバい」、そう思っての判断だったようにも感じる。

 
 いいや、もっと単純か。この会見、森友学園の籠池理事長の会見とぶつけてきた。おかげで、テレビ中継は、籠池さんへの記者の質疑応答部分が飛ばされてしまった。そこがいちばんの見せ場だった。

 記者たちは会見の前日、籠池さんがYouTubeに流した動画会見と、今回の会見での発言の食い違いを指摘した。

 なぜ、認可申請を取り下げたのか? なぜ、理事長職を退くことにしたのか? 10年以上、自分には会っていないと国会答弁で述べていた政治家(稲田大臣)に、「2年ほど前にお会いしたことがあるんじゃないかなぁ」とまでいい、「しっぽ切りはやめていただきたい」との脅しまでかける勢いだった籠池さん。

 なぜ急に1日経ったら、「国会議員の口利きはない」と発言することになったのか。

 それはやっぱり、テレビで放送されなかった部分にヒントがあったように思う。

『日本会議の研究』の著者である菅野完さんが、こんな質問をしたのだ。

「認可を自分から取り下げるって知恵をつけたのは、稲田さんの旦那さんの、龍示さん(弁護士)ですか?」

 籠池さんは慌てて、一瞬、黙り、質問とは関係ない話を捲(まく)し立てた。その後、長男が菅野さんを罵倒。怪しさ満点。これがテレビで流れていたら……。どう考えても前日のYouTubeの脅しが利いて、政治家と身の安全を守れるような裏取引をしたような感じだわい。

 ま、森友学園については、法令に基づく適正な手続きといってきかなかった、不当な国有地格安販売の嘘がバレてきている。安倍さんの留学&ゴルフ友達の、加計学園・新設学部の怪しい話も出て来た。

 共謀罪も、政府が目標としていた10日の閣議決定を断念したしな。いい感じで弱ってきたぅ~。

週刊朝日  2017年3月31日号

著者プロフィールを見る
室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

室井佑月の記事一覧はこちら