春風亭昇太(しゅんぷうてい・しょうた)/1959年、静岡県生まれ。82年に春風亭柳昇に入門。92年、真打ち昇進。2016年には「笑点」の6代目司会者となった。本業の落語の他にも、ドラマ、映画に数多く出演するなど幅広く活躍を続ける。(撮影/山本倫子)
春風亭昇太(しゅんぷうてい・しょうた)/1959年、静岡県生まれ。82年に春風亭柳昇に入門。92年、真打ち昇進。2016年には「笑点」の6代目司会者となった。本業の落語の他にも、ドラマ、映画に数多く出演するなど幅広く活躍を続ける。(撮影/山本倫子)

 大河ドラマ「おんな城主 直虎」で今川義元役を怪演した春風亭昇太さん(57)。義元が本拠地とした駿河国、静岡県出身でもあり、桶狭間の合戦で奇襲を受け、無様に討ち取られるという義元評に「不当だ!」と訴える。現在発売中の「武将の末裔[伝家の宝刀]」では、歴史に造詣が深い昇太さんが義元を熱く語ってくれた。

*  *  *

──「おんな城主 直虎」で今川義元役を演じられています。お話をもらった経緯を教えてください。

 NHKの番組に出るたびに「今川義元がやりたい」って冗談交じりに言ってたんですよ。そうしたら本当にオファーが来たんです。いやあ、言っておくもんだなと思いました(笑)。お話はすごく嬉しかったんですけど、ちょっと気がかりもあって。

──気がかりとは何だったのでしょう。

 僕は歴史の講演をしたり、そういった場でパネリストをしたりすることもあって、そんなときに「今川義元はダメ戦国大名じゃない!」というようなことを話しているんです。これまで、ドラマや映画では大概、義元の扱い方が雑というか、公家好みの軟弱な戦国大名として描かれることが多かったんですね。僕がやる義元がそういう感じだと、講演で話していることが嘘になってしまう(笑)。それはオファーが来たときに確認しました。そうしたら、「今回の今川義元は政(まつりごと)に長(た)けた実力ある戦国大名として扱う」ということだったので、「じゃあお願いします!」ということで出演させていただくことになりました。

──たしかに義元は公家風の姿の印象が強いです。昇太さんの思う今川義元像とは具体的にはどんなものなのでしょうか。

 戦で負けてしまった人なので資料は少ないんですけど、今川家の資料などを読むと不思議なことをしている形跡があるんです。義元は五男坊で、家督を継ぐ立場にはなく、幼くして僧籍に入ってるんです。その後、所領の駿河に呼び戻されて、しばらくすると兄で当主の氏輝(うじてる)が亡くなるんですが、同じ日にもう一人の兄が死んでるんですよね。これは明らかにおかしいじゃないですか。そして今川家で内部分裂があって、戦でお兄さんを破って義元が当主になる。その後いろんな合戦を通して、今川家を最大規模にする。それだけでも軟弱で愚鈍な戦国大名という印象はないと思います。これまでの扱われ方を考えると、織田信長をヒーローにするために、義元はちょうどいいターゲットだったんでしょうね。戦国大名の中でもっとも誤解を受けている人だと思っています。

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