──七つのバンドにリーダーとして参加しているようなものですよね。

 初めての体験です。それぞれのミュージシャンに合った選曲、アレンジをして、リハーサルを重ねました。睡眠時間も満足に確保できない中、一日もオフがないので、風邪をひくことも許されません。体力勝負でもあり、食事も栄養バランスを意識しました。世界のどこへ行っても、炭水化物、タンパク質、色の濃い野菜を欠かさずに食べた。人間は食事をするにもエネルギーが必要だと再認識しました。疲れ果てて食欲がなく、無理やり食べ物を口に入れた日もありました。

──コンディション維持のために、海外へ持参しているものはありますか?

 プロポリスキャンディー、水出し煎茶、インスタント味噌汁です。のどがちょっとでもイガッとしたら、プロポリスキャンディーをなめます。バンドメンバーもゴホンとしたら、すぐにわたす。パック状の水出し煎茶はペットボトルに入れて持ち歩いています。お味噌汁はフリーズドライなので軽くてかさばりません。昨年の最長の旅は2カ月で、スーツケースに20個入れていきました。ホテル内のレストランの朝食で飲む味噌汁が旅でのささやかな楽しみでした。そうだ、カップラーメンも持参しますよ。今はかさばらないリフィル(詰め替え用)があるんです。

──音楽面でも生活面でも、旅による知恵と経験でタフになっていく。

 特に16年は旅の中で新しい扉を開いていったと思います。バンドメンバーのドクターストップというネガティヴな状況からスタートした厳しい状況でしたけれど、結果として全部ポジティヴに転化できました。アンソニーに代わる新ベーシスト、アドリアン・フェローや、エドマールとも出会えました。エドマールとのデュオは、世界中のプロモーターからオファーが来ています。すべて受けたら、今年は休みがゼロになるくらいの数です。目の前の扉が閉まっても、代わりに必ずどこか別の扉が開く。自信になりました。(神舘和典)

週刊朝日 2017年3月17日号