志願者数が大きく伸びた同志社大の今出川キャンパス(16年12月撮影) (c)朝日新聞社
志願者数が大きく伸びた同志社大の今出川キャンパス(16年12月撮影) (c)朝日新聞社

 入試の志願者数は、大学の人気を測るバロメーターの一つ。どの大学の志願者が増えたかを分析すると、偏差値だけではわからない大学の実態が浮かび上がる。少子化で経営環境が厳しくなるなか、各大学は学生の心をつかもうと懸命だ。さて、学生からの評価の結果は。

 今年の私大一般入試で、大学関係者から驚きの目で見られているのが、法政大。志願者が前年比16.9%も増え、11万9206人になった。まだ集計途中の大学も多いが、法政大は2年連続で伸び、すでに確定した早稲田大を上回った。(志願者数は「大学通信」のまとめで、2月16日現在。以下同じ)

 10都市で入試を実施しており、今年からセンター利用入試を国際文化学部にも広げた。法政大の菊池克仁・入学センター長は「地域や男女を問わず受験生が増え、併願を除いた実志願者も前年から13%増えました。大学のグローバル化が求められるなか、留学を希望する学生向けの奨学金の充実など、制度面だけでなく、費用面でも『留学しやすい大学』をアピールしたことが評価されたのでは」という。

 教育ジャーナリストの小林哲夫さんはこう話す。

「法政大のオープンキャンパスは人気で、特に女子の参加者が増えた。中堅女子大から法政大に流れるなど、受験者層の幅が広がったと思われます」

 人気上昇の要因の一つとみられるのが、ニュース番組のコメンテーターとしても知られた田中優子総長の存在。2014年に東京六大学初の女性総長に就任以来、メディアでの露出が増えた。

 昨年、「自由を生き抜く実践知」を掲げた大学憲章を制定し、今年に入って大学として軍事研究を行わないことを発表した。「総長の影響で、リベラル志向が出ている」(法政大関係者)とみられ、大学の独自色が強くなっている。

 受験情報に詳しい、安田賢治・大学通信ゼネラルマネージャーは指摘する。

「田中総長は江戸文学が専門で、和服を着こなす知的な女性であり、時に鋭い権力批判もみせる。リベラルな校風を受け継ぎながらも、バンカラではない新しいイメージを生み出した」

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