だが、金正恩氏の恐怖支配は、あまりにも限度を超えており、たとえば、17年1月半ばには、粛清を行う側のトップだった金元弘・国家保衛相が解任され、次官級含む同省幹部多数が処刑された。自分以外に「力を持った人間」は根こそぎ粛清する勢いにまでエスカレートしているのだ。

 こうなると、もはや体制の幹部ならば誰もが常に粛清の対象になりかねない。

 独裁体制を維持するためには恐怖支配が必要不可欠だが、限度を超えると、いずれ政権内部からの叛乱が起きるだろう。自分が生き残るための叛乱だ。

 現在のところ、恐怖支配の徹底が叛乱の動きを抑えてはいる。

「しかし、やがてはクーデター、あるいは側近による金正恩暗殺となる可能性が高い」(北朝鮮筋)

 北朝鮮版の「本能寺の変」は案外、近いかもしれない。(軍事ジャーナリスト・黒井文太郎)

週刊朝日 2017年3月3日号