<01年7月に市場移転に関する基本合意が締結され、原処理計画で対策を実施すると確認している>(同年4月3日文書)

 しかし、浜渦氏が交わした文書には東ガスが「築地市場の豊洲移転に協力する」と記されているが、汚染処理についての直接の言及はなく、東ガス側が市場移転決定前に作成した開発計画の「基本的考え方を踏襲する」と書かれているのみだ。

 にもかかわらず、東ガスは「浜渦合意」を印籠のごとく重視し、同年5月29日の協議でも、繰り返しこう主張していた。

<01年7月の2者間合意(基本合意の内容を都と東ガスで確認したもの)で、土壌汚染処理対策は今の計画で良い旨確認しているし、当時の局長や部長も了解しているはずだ>

 一方、都は東ガスにこう畳みかけていた。

<環境基準の10倍を超えない(が汚染がある)39箇所の汚染処理をしたくないということか>(同年4月3日)

<その通り。(中略)全箇所を処理していては市場移転のスケジュールに間に合わない。市場も昨年全部処理すべきだと言ってきたが、こちらからそれは無理と説明している>(東ガス)

 しかし、不可思議なことに「浜渦合意」に至るまでの記録は一切、存在しない。浜渦氏は当初、土地の売却を拒んでいた東ガスを籠絡するため、石原氏に交渉担当を任されたが、00年10月に「水面下での作業を進めさせてもらいたい」と提案。以後の交渉記録はなく、01年7月にいきなり合意となるのだ。東ガス側はその水面下の作業について次のように説明している。

<文書で約束すると文書開示の話もあるからということで、口頭でいろいろ確認させてもらってきた事実もある。土壌汚染処理に対する世間の反応があるのはわかったうえで、基本合意なり地権者合意なりを行っているはずだ>(03年5月29日)

 世間の反応を気にして記録に残さなかった約束が存在するという。事実ならまさに“密約”ではないか。

「水面下」で何が話されたのか。本誌は浜渦氏が社長を務める都内の会社から出てきたところを直撃した。

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