一方、中断していた20等級の保険を引き継いだ場合、1年間の保険料は、なんと半額以下の16万400円となるのだ。

 仮にAさんが、孫が運転免許を取得するまでに亡くなったとしても、中断から10年以内であれば、その等級を受け継ぐこともできるので、孫にとってはありがたい「形見」となる。無事故割引が大きくなった保険は、決して「解約」してはいけない。「中断」手続きを取ることによって、数年後、家族や孫への大きなプレゼントになるかもしれないのだ。こうした制度は、保険料が高すぎて自動車保険に加入できないという悩みを持つ若い世代の無保険車率を下げることにも役立つだろう。

 自動車保険の解約を申し出た場合、通常は保険会社や代理店から、「中断」の手続きがあることを説明される。大手損保の場合、保険代理店システムの段階で、中断制度についての注意文言を記載したり、確認メッセージを表示させたりすることで、漏れのない案内ができるような態勢を取っているという。

 インターネット契約の場合も、解約を申し出ると、最終的にはスタッフが対応するため、安易に解約手続きには至らないはず。だが、中には十分な説明をしない代理店もあり、契約者が理解しないまま「解約」してしまっているケースも少なくない。

 もし、ここまで読んで「しまった!」と思った人は、すみやかに契約していた保険会社に連絡を入れてほしい。

 ちなみに東京海上日動では、旧契約の保険期間の末日から5年以内に申し出た場合、さかのぼって「中断証明書」を発行する。この期間には各社でばらつきがあり、損保ジャパン、三井住友海上は13カ月以内となっている。長年積み上げた自動車保険の割引までみすみす捨ててしまわぬよう、注意が必要だ。

「事故を起こしたことすら覚えていない。そう言われてしまったら、いったいどこに怒りをぶつけてよいのか……」

 高齢ドライバーによる事故の遺族から、こんな切実な声が寄せられる中、警察庁は今年1月、高齢ドライバーによる交通事故を減らすために有識者会議を立ち上げ、対策の検討に乗り出した。3月には改正道路交通法が施行され、免許更新時に認知症が疑われる場合は、医師の診断を義務付けることになった。

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