交通事故現場 (c)朝日新聞社
交通事故現場 (c)朝日新聞社

 高齢者による交通事故が相次ぎ、免許証の返納を検討している人も多いだろう。だが、長年無事故を続け割引率がアップした自動車保険は安易に「解約」してはいけない。免許証返納の特典と併せ、運転卒業の前に知っておきたい情報をジャーナリストの柳原三佳が紹介する。

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 免許を返納となると、自動車保険の解約を一刻も早くと焦りがちだが、ここで早まってはいけない。

「当社の場合、自動車保険の解約を申し出る7等級以上のお客様には必ず中断手続きをお勧めしています」

 そう語るのは、青森県八戸市の山手保険事務所代表・佐々木正志さんだ。

「『自分はこの先、もう車には乗らない……』というお客様でも、とりあえず中断しておけば、その先10年間は同居のご家族がいつでもその保険を引き継ぐことができるのです。長年無事故を続けてきたドライバーにとって、自動車保険の無事故割引は大きな財産です」(佐々木さん)

 マイカーの廃車、譲渡、車検切れ、リース業者への返還、盗難、災害、海外渡航などに伴って、自動車保険の契約を中断しなければならない場合は、その旨を保険会社に伝えて「中断証明書」を発行できる。

 この手続きさえしておけば、契約者と同居する親族が新たに車を入手した際、10年間を上限に、その親族が中断時の割引等級を引き継ぎ、契約をスタートすることができる(ただし、解除・失効した契約および契約車が構内専用車の場合は対象外)。

 まもなく運転歴60年になるAさんは、77歳の喜寿を機に車を降り、自動車保険も解約するつもりだった。しかし、同居している小学3年生(9歳)の孫があと9年経てば車を運転できる年齢に達する。Aさんは無事故で、かけ続けてきた20等級の自動車保険を残しておくことにしたのだという。

 ちなみに18歳のドライバーが「・対人賠償 無制限・対物賠償 無制限(免責0万円)・弁護士費用補償特約あり・人身傷害 3千万円・車両保険 200万円(免責1回目0万円、2回目10万円)、一般条件、新車割引あり」という条件で、新規の自動車保険(6F等級)を契約した場合、1年間の保険料は34万6780円になる。

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