しかし、半年ほどたつと薬を服用しているのに、再び症状があらわれるようになった。発作が始まる時間が夜の8時、7時と次第に早まり、症状が太ももや足の裏、腹部にまで広がってきた。主治医に相談したところ、井上医師を紹介された。

「柳沢さんのその時点での服用量は1日あたり0.75ミリグラムでした。そこでまずは半分の0.375ミリグラムに減らし、さらに抗てんかん薬でむずむず脚症候群の治療薬として改良された『ガバペンチンエナカルビル』(商品名・レグナイト)を追加したところ、オーグメンテーションは落ち着きました」(同)

 ガバペンチンエナカルビルは脳内のGABA系という神経の働きを高めてむずむず脚の症状をやわらげる。入眠を促したり、周期性四肢運動を抑えたりという作用もある。

 このほか貼り薬の「ロチゴチン」(商品名・ニュープロパッチ)を使うこともある。ロチゴチンはドーパミン受容体作動薬だが、オーグメンテーションが起こりにくいとされる。

「貼り薬は24時間、安定して効果が得られるので日中も頻繁に症状が出る患者さんに向くのです。プラミペキソールの減量ではなく、完全に休薬して、こうした薬に変更することもあります。ただ、短期間でうまくいくケースもある一方、一度オーグメンテーションが起こると治療が難しくなる場合も多く、予防が大事なのです」(同)

 プラミペキソールは1日あたり0.125ミリグラムから始め、症状を見ながら0.75ミリグラムまで増やすことができる。

 井上医師によれば安易に増量せずに少量で継続していくことがオーグメンテーション予防のポイントだという。現在、他の専門医とともに、どのくらいの量や投与期間でオーグメンテーションが起こるかを検討中ということだ。

 むずむず脚症候群が軽症の場合、まずは薬の処方前に、生活療法を中心とした非薬物療法をおこなう。

 中等症以上の場合も非薬物療法を併用することで薬の量を抑えられる。オーグメンテーション対策としても有効だ。

 獨協医科大学病院神経内科教授の平田幸一医師はこう言う。

「生活習慣としては特に『早寝早起き』『規則正しい生活』が大事です。むずむず脚症候群の患者さんは症状が夜に悪化しやすいことから、夜型の生活になっている人が多いのですが、だからといって昼夜逆転の生活をすると症状がさらに悪化します」

 さらに悪化要因としてアルコール、たばこ、カフェインが知られている。

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