あなたの不眠、意外な理由が隠されているかも (※写真はイメージ)
あなたの不眠、意外な理由が隠されているかも (※写真はイメージ)

 脚の不快感で夜眠れない。座っていると脚をもぞもぞ動かしてしまう。思い当たる人は「むずむず脚症候群」かもしれない。病気に気づかずに不眠に悩む人が多い。約8割が第一選択の薬で改善が見込める。

 むずむず脚症候群は安静時や入眠時に不快な下肢(脚)の異常感覚が起こり、「脚を動かしたい」という強い衝動が起こる病気だ。「夕方から夜にかけて症状が生じる」「脚を動かしていないときに症状が強く起こる」「動かすことで不快感が軽減または消失する」といった特徴がある。また、夜中に脚や手が自然に動く「周期性四肢運動障害」も多くの患者にみられる。

 睡眠不足によって日中の活動が障害されるほか、うつ病やパニック障害などを併発することもある。

 有病率は人口の約4%(25人に1人)で、潜在的な患者はかなりいると推察される。睡眠総合ケアクリニック代々木理事長の井上雄一医師はこう言う。

「むずむずのほか、ちりちり、しびれる、痛い、熱い、虫が這うなど、患者さんの感じ方はさまざま。数は少ないですが、おしりや肩、腕、顔など脚以外の部位に起こることもあります」

 むずむず脚症候群が起こるメカニズムは明らかではないが、脳の神経伝達物質であるドーパミンの伝達がうまくいかないなど、ドーパミンの機能障害によって起こると考えられている。

 ドーパミンの働きに必要な鉄分の不足が要因となっていることもある。患者の30~40%に家族歴がある。

 中等症以上の患者に対しては、パーキンソン病の治療薬として知られるドーパミン受容体作動薬「プラミペキソール」(商品名・ビ・シフロール)が第一選択となる。ドーパミン受容体の働きを高め、症状を改善する。

「患者さんの約8割に効果がありますが、注意点として『オーグメンテーション(症状促進現象)』を起こしやすいことがあります。オーグメンテーションが起こると症状のあらわれる時間が早くなったり、脚以外にも広がったりします。これを解消するには薬の調整が必要です」(井上医師)

 東京都に住む柳沢和子さん(仮名・50歳)は子どものころから、夜、布団に入るとふくらはぎのあたりがむずむずし、起きてしまうことがあった。40代になると連日、症状が起こるようになり、困ってかかりつけ医(内科)を受診した。診断の結果、むずむず脚症候群とわかり、プラミペキソールを処方された。1日1回、就寝の2~3時間前に服用する。すると徐々によくなり、熟睡できるようになった。

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