WBCに出場したかったという大谷選手。小久保監督は、中心選手を失って苦しい戦いを強いられている (c)朝日新聞社
WBCに出場したかったという大谷選手。小久保監督は、中心選手を失って苦しい戦いを強いられている (c)朝日新聞社

 侍ジャパンの中心選手である日本ハム大谷翔平選手(22)が来月行われる第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場するメンバーから外れることが2月3日、発表された。報道陣に対し「何とか出場できるようにやってきたんですが……」と語った本人の思いをよそに、不出場という結論に至るまでの数日間の混乱の中でWBCの現実が垣間見えた。

 発端は、日本ハムの栗山英樹監督が先月31日(日本時間1日)、キャンプ地である米・ピオリアで衝撃の告白をしたことだった。「投げることは無理。それはジャパン側にも伝えた」と、大谷の投手としての出場辞退を明かしたのだ。さらに小久保裕紀監督ら侍ジャパン首脳が「知らなかった」というニュアンスの反応をして、混乱が増幅された。「混乱収拾のためにNPB(日本野球機構)幹部が2日、沖縄に飛び、小久保監督らと擦り合わせしたようです。その日の午後、『(小久保監督にも)伝わってます』と説明しつつ『連絡の行き違いがあったのは確か』と苦しい釈明をしました。日本球界の宝である大谷の所属先の日ハム側が悪者になっていたから繕ったんでしょう。日ハムは『(大谷が)かわいそう。1日から別メニューになるので、それまでに話す必要があった』と言い訳しつつ、勇み足を謝罪してましたよね」(スポーツ紙デスク)

 その時点では野手としての出場の可能性は残していた大谷。小久保監督がWBC不出場を発表したのは、翌日だった。

 日ハム側は侍ジャパン側に29日(日本時間30日)に連絡したとしているが、侍ジャパンが発表すべき内容を日ハムが公にしたという印象は拭えない。そもそもなぜ、中心選手の大谷のコンディションを、侍側が正しく把握できていなかったのか。

「大谷は、WBCに出たかったから『ダメかも』という言い方はしなかったと思う。昨年11月の侍ジャパンの強化試合で痛めたそうで、その後はオフ。球団側も選手の状況をつかみづらい時期ですしね。で、キャンプイン間近になって状況を把握した球団が出場を思いとどまらせた。本人に任せたら無理にでも出場したと思います」(ベテラン記者)

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