綿矢:賞を取ったあとに小説を書き続けるのは大変でした。仕事はありがたいのですが。そんなとき、同年代で書き続けていた金原さんの姿に元気づけられた。それなら私もやろうかって。

金原:でも最近、全然連絡くれないよね。

綿矢:いやいやいや、本当は連絡したかったけど、フランスとは時差もあるし、忙しいのではないかと迷ってた(笑)。

──13年の間に2人とも家族が増え、生活環境も変わった。作品にもおのずと変化が表れているという。

金原:フランスでの生活は、2012年からだからずいぶん慣れました。最初の1年は鬱状態で大変だった。下の子が1歳になりたてくらいで。自分でもこれはやばいと思いつつ、1年したら慣れちゃった。

綿矢:適応力がすごい! 私なんて結婚して関西から関東へ引っ越してくるだけで疲れちゃったのに(笑)。女性は結婚や出産をしようと思ったら、20代から30代にかけて一気にくるでしょ。もっと計画性のある生活設計をしていれば良かったって後悔するときがある。家でインターネットをずーっと見ているのが大好きで(笑)。そんな暇があったら、もっと海外へ行けたし、いろんな人に会えたはず。

金原:書き続ける上で、子どもの存在は大きかった。娘2人の性格は今回の小説の姉妹と同じで正反対。ずっと恋愛小説を書いていれば、スパイスがほしくなる。家族を持つことは新しい人間関係を築くことでもあり、書く場所が変われば影響されることもある。触れている情報が変わることによって、私も変化する。自分でも新鮮。今回も、「こんな小説書くんだ、私」って。

綿矢:うちは1歳。子育てしながら書くのはなかなか厳しい。日々がてんやわんやしていると、「書きたい」という思いにつながらない。だから、長編は難しくても短編なら書けるかもって思っています。

金原:しみじみわかる。うちは娘2人が9歳と5歳になって、やっと書くための環境が整ってきた。今回の作品では、小説を書く面白さに立ち戻れた気がします。書くためには、ある程度平穏な生活と精神状態が必要だと実感してます。

綿矢:最近、家族について書いてみたいと思うようになった。いままではそれより男女関係に興味があったから大きな変化です。

金原:綿矢さんの家族小説読んでみたい!

週刊朝日  2017年2月10日号