私立の高知工科大(高知県香美市)が09年に高知県によって公立化されたことを皮切りに、名桜大(沖縄県名護市)や公立鳥取環境大(鳥取市)など、これまで7大学が公立化された。現在も公立化を希望する大学があり、今後も増える見込みだ。

 公立化による最大のメリットは、学費が安くなること。高知工科大は、公立化で年間約124万円の授業料が約53万円まで下がった。06年度から定員割れが続いていたが、公立化された09年度入試では、志願者が約8倍に増えた。

「高知工科大はもともと教員の質が高く、公立化前も就職実績はよかった。潜在能力の高い大学だったので、公立化で割安感が出ました」(教育ジャーナリストの小林哲夫氏)

 ただ、私立大の公立化には「税金による救済策だ」との批判もある。前出の近藤氏は言う。

「私立大が公立化したからといって、教育内容が必ず変わるわけではありません。学費が下がって安定的に志願者を見込めても、教育内容を充実させ、他大にない特徴を生み出さなければ、受験生に選ばれる大学にはなりえません。改革の成果が出るまでは10年かかります。10年後に公立化の真価が問われることになる」

 学費が下がって“お得”になっても、それが入学する学生にとって最良の選択になるとは限らない。教員と学生が、公立化のもとで新たな実績と伝統を築いていくことが欠かせない。
 前出の金子氏は、大学の今後についてこう指摘する。

「サークルやバイトだけではなく、『学び』と『人格形成』を中心とした生活が送れる大学を選ばなければなりません。そういった環境を与えられる大学が、今後は評価されていくでしょう」

 めざす大学は自分にとって何を与えてくれるのか。それを見極めたうえでの大学選びをしてほしい。

週刊朝日  2017年2月3日号より抜粋