漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、連続テレビ小説「A LIFE~愛しき人~」(TBS系 日曜21:00~)において、キムタク主演ドラマでありがちな設定などにツッコミを入れる。

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 ドラマの番宣でバラエティーに出まくった木村拓哉。今までとは違うんだとアピールしたいのか、自分の立ち位置への危機感か、どの番組でもやる気満々だった。

 しかし、なんでしょう、この浮いてる感。エアホッケーで俺様プレーしてみたり、チェッコリダンスとやらをキレキレで踊ってみたり。そこでツッコんであげてーってところで、誰もツッコまない。どこまで距離を詰めていいのか、計りかねる周囲に、慣れぬ張り切りでこれが正解なのか?と、不安気な木村の瞳。

 結局、木村にツッコめるのは、SMAPだけだったのだと思い知らされる冬。そんなツッコミ不在の微妙な空気は、このドラマの中にも流れている。

 単身アメリカに渡り、技術を磨いた天才外科医・沖田(木村)。かつての恋人・深冬(みふゆ/竹内結子)の父親である病院長(柄本明)の命を救うため、戻ってきた。

 けっこうベテランといえる年齢なのに「動きサイコーっすね」とか「ガンプラだけは、俺のがぜってー上」とか、基本タメ語の木村節。硬直した組織に現れた型破りのヒーローが、そのまっすぐな思いで周囲を変えていく……って、もう木村主演のドラマには、あらかじめフォーマットがあるとしか思えない。どんな豪華キャストでも、主人公の魅力にひれふす派と、その光がまぶしすぎて闇に落ちる派の二択だ。

 初回、CM前の画面には「ラストに衝撃の展開が待ち受ける!」の文字が。もしや、今までの定番をぶち破る衝撃が!?と思ったら、副院長役の浅野忠信が、拳でドーン! 怒りにまかせて壁に穴開けてた。それを見た愛人の菜々緒が、「穴開けたんですか?」って、見たまんまツッコミ。そんなツッコミ待ってたんじゃないからー!

 
 実際の衝撃展開はというと、木村のオペで院長の命は助かったものの、今度は娘の竹内が脳腫瘍であることがあきらかに。なんだこの、病院関係者が次々倒れていくドミノ倒し医療ドラマ。患者を救うのかと思いきや、医者が医者を治すので手一杯という新機軸。

 そして心臓外科医なのに、専門外の脳外科手術もまかされちゃう万能・木村。こうなったら、キャスト全員発病して、全部木村に手術してもらうしかない。最後に木村が倒れたら、「ドクターX」から大門未知子(米倉涼子)呼んできて。

週刊朝日  2017年2月3日号

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カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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