北原みのり「『平和の碑』と『少女像』」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

北原みのり「『平和の碑』と『少女像』」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

このエントリーをはてなブックマークに追加
「忘れさせよう」とする国の力と、「忘れてはならない」と考える人々の声。どちらに私たちは寄り添うべきだろう (※写真はイメージ)

「忘れさせよう」とする国の力と、「忘れてはならない」と考える人々の声。どちらに私たちは寄り添うべきだろう (※写真はイメージ)

 水曜集会が始まったばかりの90年代前半の映像を見たことがある。たった数人の女性たちが「日本政府は謝罪しろ!」と声をあげ、街行く人は、ただ前を足早に通り過ぎていった。「恥ずかしい過去を何故語る?」というのが当時の韓国社会のフツーの眼差しだったという。そういうなかで、四半世紀、女性たちは日本大使館前に立ち続けた。これは女性の人権の問題なのだと訴え続け、韓国社会だけでなく国際社会も動かしていった。その集会の千回を記念して2011年に創ったのが、「平和の碑」だ(一般に「少女像」と呼ばれている)。

 一昨年末の「日韓合意」は、国会での公式謝罪、教育、賠償を求めてきた被害者からすれば受け入れられないものだったろう。さらに被害者の闘いの記憶である「少女像」まで持ち出されたことで、市民たちの関心が高まった。

 今、話題になっている釜山の日本総領事館の前の「少女像」は、「合意」への抗議として市民たちが企画したものだ。ソウルの「平和の碑」と釜山の「少女像」は設置の背景も、創った団体も違う。それでも、たとえどんな理由であっても、国家の横暴に「それは違う」と声をあげる権利がどの国民にもあるはずだ。

 日本のメディアは「韓国が約束を反故にした」という方向の報道ばかりだけど、嫌悪を煽るのではなく、冷静に考えてみたい。「忘れさせよう」とする国の力と、「忘れてはならない」と考える人々の声。どちらに私たちは寄り添うべきだろう。

週刊朝日 2017年1月27日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい