国産初となる手首の人工関節が製造販売承認を受けた。(※イメージ)
国産初となる手首の人工関節が製造販売承認を受けた。(※イメージ)

 進行した関節リウマチで、破壊された関節を人工物に置き換える手術は、ひざや股関節が中心だ。しかし近年、手の指の手術が増え、2016年秋には国産初となる手首の人工関節が製造販売承認を受けた。

 関節リウマチは外敵からからだを守る免疫システムの異常により、自らの関節を攻撃してしまうことで発症する。具体的には、関節の滑膜(かつまく)という組織が自己免疫の異常によって増殖し、周囲の腱や靱帯、関節軟骨といった軟部組織を侵食して破壊してしまう。

 主な症状は関節の痛みや腫れ、動かしづらさ、変形などであり、関節破壊は手からひざや股関節など、全身に及ぶ。手全体の症状は、手首から始まって手指に広がる。医療では手首を手関節と呼ぶ。発症から10年後の患者の90%以上に何らかの手関節の症状がみられるという。

 北海道大学病院整形外科の岩崎倫政医師は、

「手指を伸ばす腱が、手関節部分で断裂すると、手指の変形につながります。手の症状に対しては、まず手関節をきちっと治すことが重要です」

 と強調する。

 手関節の破壊が進むと、物を持ったり、字を書いたりする動作を中心に、家事や仕事など、日常生活全般に支障をきたすようになる。さらに進行すると、手関節が固まって動かなくなったり、自分の意思では制御が利かない、ぶらぶらした状態になったりする。

 このような患者には、発症の引き金になっている滑膜を切除する手術のほか、関節を固定する手術などがある。関節を動かさなければ痛まないため、痛みをとるために動きを犠牲にして関節を固定するわけである。

 最終的には、ひざや肘などの関節同様、痛みがとれて、動きも改善できる人工関節への置換手術が必要になる場合もある。しかし、これまで臨床の場で使える人工手関節がなかった。岩崎医師は言う。

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