作家・室井佑月氏は、「東京オリンピックをダシに」政府が情報を操作するのでは?と予測する。

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 今日は1月9日。先週号のコラムは去年の年末に書いたもので、これが年明け一発目の週朝コラムになる。だから、大きな声でいっとくわ。あけましておめでとう!

 ほんとに開けなきゃ、目を見開かなきゃ。テレビから正月気分が去ったころ、トランプの米大統領就任の話題一色になり、その後、あたしは東京オリンピック祭りになると予想している。

 東京オリンピック開催の2020年まで、国民の気持ちを盛り上げるため、くり返しくり返しその話題ばかり取り上げるんだろうと思われる。スポーツの話題は、明るいし、誰も文句をつけないから。

 ほら、莫大な費用をかけて東京オリンピックの新施設を造るかどうか揉めた時、新施設を造りたい側はアスリートたちに発言させたじゃん。

 すると、なんか文句がいえない雰囲気が作られるんだよ。これから先も、そういうことになりそうで、心配している。

 東京オリンピックの話題で、重大なニュースが隠れてしまったりして。いや、隠しはしない。アリバイ作りのために、ちょろっとだけ扱う。政府の発表をただ流す。

 政府の取り決めが、我々国民にとって最善のことだとは限らないのに。

 1月7日付の信濃毎日新聞の社説に、「『共謀罪』法案 危うさは変わっていない」という記事が載っていた。さすがに、新聞はどっこも共謀罪には否定的だが、テレビはまだまだだ。

 
 何度も提出されては廃案になった危ない法案なのに。だって、人として生きていくために大切な人権の話だよ。新聞を読まない人たちのためにも、共謀罪について、もっと時間をさいて深く放送してもいいんじゃないか?

 菅官房長官は6日の記者会見で、

「政府が検討しているのはテロ等準備罪であり、従前の共謀罪とは別物だ。犯罪の主体を限定するなど(要件を絞っているため)一般の方々が対象になることはあり得ない」

 といっていた。が、不安は拭えず。信濃毎日新聞の社説には、こう書かれていたぞ。

〈テロ対策は、後付けで持ち出されたにすぎない。日本はテロ防止に関わる国連の条約をすべて締結している。国際的な要請として、さらに共謀罪を導入しなければならない理由は見いだしにくい〉と。

 じゃ、なんでそんなにこの法案を通したいの?

 ひょっとして、東京オリンピックをダシに、権力者が今までそこまではできなかった国民への監視を強めようとしているんじゃないか? ただの監視じゃない、共謀罪は心まで管理されるようになるからタチが悪い。

 テレビはオリンピックを成功させようという話をはじめに流し、その後、この話を自然な形でさらりと持ち出してきたりしてね。ほんでアスリートたちに、「オリンピックを無事に成功させるためには、必要なこと」といわせたりね。

週刊朝日 2017年1月27日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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