斉藤:一流? どうでしょう。ただ、お互いに演じるという作業が楽しくてたまらないんでしょうね。そこが共通しているので、ご一緒するのが楽しくてしょうがなかったです。

林:そういう気持ちって、いつごろからあったんですか。女優が天職だというのは。

斉藤:女優が天職だという気持ちは、すごく早くからありました。

林:アイドルとして歌を歌っていたときから?

斉藤:歌も私にとっては演じることの一端ですから。こんなこと言っちゃいけないのかもしれませんが、私、「なんちゃって歌手」ですから。

林:大ヒット曲、たくさんあるじゃないですか。そろそろ「卒業」が流れる季節ですよね。すごくいい歌。

斉藤:素晴らしい作品をたくさんいただきました。うまいわけでもない、訓練したわけでもない私が歌い続けるとしたら、演技という切り口しかないんです。演じることで自分が完成するみたいな部分があります。私はふだんはすごくつまんない人間なんです。みんなを盛り上げたり楽しませたりとか一切できないし、わりとボンヤリしたごくフツーの人。だけど役をもらって演技することによって、自分という存在の輪郭がはっきりする。自分の存在を自分で認識するためにも、演じることは私にとって不可欠なんです。

林:演技に定評があり、再ブレークと言われるほどの人気があり、50歳にしてこの美貌と若さを保ち、3人のお子さんと温かいご家庭にも恵まれている。こんなに幸せな女優さんって、なかなかいないんじゃないですか。

斉藤:いま自分がとても運がいいということは自覚してます。でもこの30年のあいだにはうまくいかないこともあったし、すべては一過性のものととらえてるんです。いま確かにおもしろい仕事にたくさん恵まれて幸せですけど、いつまでも続くものでもない。自分の状況を、すごく客観的に捉えていますね。

週刊朝日  2017年1月27日号より抜粋